ASCII アスキーツクールシリーズ Development by デジタルファミ通 夜明けの口笛吹き <羊水の海> 【黒い服の男】 「……ようこそ。 「お前さんの聞きたい事は解かってるよ。 「ここはどこなのか?自分は一体、いつからここにいるのか? 「そうだろう? >いいえ 「おやおや、捻くれ者だな…… 「ここは……通称、最低の地。 「お前はそこの羊水の海から流れてきた。 「いつから……それは知らない。 「ついさっき来たのかもしれないし、ずっと昔からいたのかもしれない。 「……どうでもいいことだよ。この世界に来てしまった以上はね…… 「……名は? >トト 「トト… 「トト… 「トト……! 「……ふふ、可愛い名だ。気にいったよ。 「よろしく、トト。 「そこの箱の中にプレゼントがある。忘れないように取っておいてくれ。 「そうそう、装備するのを忘れずにな。 「危ないぞ、トト! 「羊水の海は浸かった人間の心を真っ白にし、そして徐々に肉体を溶かしていくんだ。 「ゆっくりと、ゆっくりと……バターのようにね。 「死にたくなければ、近づかない事だ。 「何か訊きたい事でもあるのかい、トト? >最低の地について 「ここが何故、最低の地と呼ばれるか…… 「それは至極簡単な事。ここが世界の一番下だからだよ。 「本当さ、ここより下は何も無いんだ。何もね。 >この世界について 「この世界は……何処かへ続いている。 「進めば進むほど上へ上へと向かっているみたいだが、どこに行き着くのかはまだ誰も知らない。 「辿り着いた者が居ないのか、辿り着いた者が帰って来ないのか…… 「トトよ、お前は何があると思う? >理想郷 「ははは、理想郷!こいつは恐れ入った……! 「ここには幸福も不幸も、善も悪も、喜びも悲しみも、愛も憎しみも、全てある。ほかに一体何が欲しいんだい? >あなたは誰? 「私か?私は……ただの黒い服の男さ。自分の名前すら分からない男だよ。 「お前はいつのまにかここに居る。私もいつのまにかここに居る。それだけだ。 「誰も自分の事なんてロクに知らないもんだ。 「そこから腐った細道を抜ければ町がある。 「そこで暮らすのも良いし、もっと先の世界を目指しても良い。 「お前さんの自由だよ、全ては。 「……。 「なるほど。 「さっさと死ぬのも、また一つの選択だ。 羊水の海に浸かりますか? >いいえ <腐った細道> 【小人】 「冴えない顔の兄ちゃん! 「何か用? >誰だキミは? 「俺はコロボックル。 「出来る事と言ったらお前の旅の記録をとってやるぐらいだけど…… 「記録する? 「気をつけてな。 「そうそう、Shiftキーおしっぱなしでダッシュできるってこと覚えてたほうがいいよ。 【男】 「……ちょ、ちょっとお待ちを……! 「……く…そ……盗賊どもめ……!! 「……あ、あなたは……?いや、もう誰でも良い…… 「頼みがあるのです、聞いて下さい……! >いいえ 「……だったら、これから言う事は私の遺言です。どうぞ誰かにお伝えください…… 「……実は先ほど盗賊に襲われたのです……私は……口惜しいが…もう助かりませんでしょう…… 「しかし気残りは私の娘……! 「……盗賊どもに捕まった若い娘は皆、この先の町の奴隷商に売られてしまうのです……! 「……そこでお願いが……あなたの手で娘を買って頂きたいのだ……!そして娘を解放して頂きたい……!! 「……この宝石があれば、きっと奴隷ぐらいは買えるでしょう…… 「お願いします……!あなたが嫌だと申すなら誰か他の人にこの事を伝えてください……!! 「このままでは娘の人生が闇に閉ざしてしまいます……本当に、お願いします……! 「くそ……!!忌々しい…盗賊どもめ……!!呪い殺しても……浮かばれ……ん!! 「どう……か、お願い……します……!!娘……名前……クリシュ……ナ…… 「くそ……と、うぞく……め……!! 「ゲホ、グホっ……!……おね…が…し…… 【盗賊】 「……何か用?俺は別にあんたに用なんて無いけど。あんたも用無いでしょ? 「さっさとウチに帰んな。 【青年】 「や、やあ。君もこの世界に来たばかりかい?僕もだよ。 「この先にある醜い町は、とにかく人の心が荒んでる。気をつけなよ…… 「僕はお金も装備も盗賊に盗まれてしまって、もうどうしようもない状況だ。 「ホント、どうすりゃいいんだろ?参ったなぁ…… <醜い町> 【女性】 「……はい? 「……ここは醜い町ですけど。なんですか?馴れ馴れしい…… 【男性】 「……なんすか? 「……ここがどうして醜い町って呼ばれてるかって?そんなの最初からに決まってるでしょうが。 「……最初がいつかだって?そんな事私が知るわけないだろう…… 【子供】 「じいちゃん…… 「さっさと死んでくれないかな〜。 >そんな事言っちゃダメだ 「なんの苦労もしらないで、キレイ事言ってろ! 【モノシリドリ】 「こんにちわ。私はモノシリドリ科モノシリドリぢゃ。今日はキミにいいことを教えてあげよう。 「恐怖というステータス異常は、かかった人間の腰を抜かす。即ち、攻撃力と精神力が半減するのぢゃ。 「トランキ草や万能薬が無い場合は、おとなしくバックアップに回るのもスマートなやり方だと思う、個人的に。 【犬】 「わうわうわう。 【武器オタク】 「武器について説明してやろうか? >いらない 「あっそう。 【男性】 「“服”は誰でも装備できるが、“鎧”は屈強な人間でないと無理だ。 「“小さい盾”は誰でも装備できるが、“大きい盾”は屈強な人間でないと無理だ。 「“装飾品”や“腕輪”は不思議な能力を備える装備品で、誰でも装備できる。 「理解したか? 【若者】 「ここの宿屋は泊まった客が目を覚まさないことで有名だ。 「死んでいる……ってわけじゃないんだけどね。どう起こしても起きないんだよ。不思議なこともあるもんだ。 【女性】 「いいから泊まっていきなさいよ。 「あんたがお金持ってても仕方ないのよ。私にとっては。 【おばさん】 「7貨だけど、泊まっていくかい? >はい 「お金が足りないなんて、笑わせるね。 【男性】 「“あんまら”には体力を回復させる効果がある。 「高価なあんまらになるともっと体力を回復させる力があるようだ。あんまらに感謝しろよ。 【子供】 「ステータス異常を治療する草……1つずつぐらい買っていったってバチはあたらないぜ兄ちゃん。 【女性】 「マギっていうのはいわゆる魔法の事よ。由来とか詳しい事はあんまり知らないけど……とにかくみんなマギって呼んでるの。 「だから私もマギって呼んでるわ。あなたもそうしなさい。 「この世界で経験を積めば、あなたもマギが使えるようになるわ。素質さえあればね。 【怪しい男】 「兄ちゃん、活きの良い奴隷が入ったよ。見てったらどーだい? 【奴隷商】 「クリシュナ?おう、いるぜ。さっき仕入れたばかりの上玉さ。情報が早いね兄ちゃん! 「購入したいんなら20000貨と許可証が必要だ。もってるよな? >いいえ 「宝石ならある?ダメダメ。 「まず、その宝石はさっさと換金しろ。闇市に宝石が大好きな教徒がいる……そいつに頼め。 「それから手に入れた金で奴隷所有許可証を自治組合で発行してもらいな。話はそれからだ。 「商品はいつまでも残ってないぜ? 【赤い髪の少女】 「……。 【黒い髪の少女】 「……ひっ……! 【褐色の肌の少女】 「もうオシマイだわ…… 【奴隷商】 「ゆっくり選んでいけよ。 【老人】 「わしも一人でいいから奴隷が欲しかった…… 「しかし自治団体の発行する許可証は貧乏人には手の出せん値段じゃ。足元を見おってからに…… 【男性】 「盗賊が捕えた奴隷を奴隷商が買う。奴隷を買う為に金持ちが自治団体の許可証を買う。 「これで結果的に金は回る。町は富むんだよ。たった一人の不幸なんてどうでもいい。 【男性】 「ここは裏街。犯罪が多いから気をつけろよ! ……5貨盗まれた! 「うそうそ、返すってホラ! 【盗賊】 「30貨ちょーだい。 >断わる 「じゃあ、死刑。 【女戦士】 「私はここよりもっと先の世界を旅してきた。 「しかし、結局はここ醜い町で暮らすことにしたわ。この荒みきった町でね。 「どういう事かわかる?もっと悲惨なのよ、ここから先の世界は……! 「あなたも、もし旅をするつもりなら覚悟しておきなさい。 【戦士】 「ここに売っている物はすべて違法スレスレの物や違法なものばかりだ。 「決して手を出すんじゃないぞ。 【怪しい男性】 「あんまり他じゃ大っぴらに売れないモノがあるよ。 【売人】 「しーっ!……どれにするんです!? 【変な男性】 「……な、なんだよ。 「……む、むこういけよ。 【教徒】 「なにか御用ですか? >宝石が大好きな教徒ですか? 「いかにも、私は宝石の大好きな教徒だ。しかしそれは失礼な言い回しだということに気付きなさい。 「さて……そんな事よりも、商売の話ですか?ほう、ダイヤらしき宝石を持っていると、と。 「いいね、ダイヤは大好きだ。どれ、見せてみなさい。 【トト】 「……!? 【教徒】 「あー……分かっているとは思うけど…… 「……宝石盗まれたよ。 「あいつは恐らく腐った細道にアジトを構える盗賊の一味。 「頼んでも絶対に返してくれないだろうから、素直に諦めなさい。怪我してからじゃ遅いもんな。 「……そんな顔したってダメ!僕のせいじゃないでしょう。不運だと思って諦めなさい。 【奴隷商】 「なに?宝石を盗まれた……?知るか! 【老婆】 「なんじゃ。わしゃもう売っとらんぞ。 「どうしても売って欲しいのかい? >はい 「……お前さん物好きじゃのう。そんなに欲しいのかえ。 >はい 「……春を売る若いもんならそこらへんにいくらでもいるじゃろう。それでもあえてこの婆あを買うというのかね? >いいえ 「なんじゃ、期待させおって。 「そういえば、井戸で変なコケを見たのう。お前さん、持っていくとええぞ。 【兵士】 「ここが自治団体の建物だ。用が無いなら帰りなさい。 【兵士】 「奴隷が欲しい?ならここで許可証を発行してもらうんだね。 【戦士】 「先の世界に行くには、西の堕ちた神殿を通らねばならないんだが…… 「ここを通るにもまた許可が必要なんだと!まったくアホらしい…… 【窓口】 「なにか御用でしたら一番左の案内窓口へどうぞ。 【案内窓口】 「なにか御用ですか? >奴隷所有許可証がほしい 「一番右の窓口へどうぞ。 【おばさん】 「苦情を言いにきたのよ!! 「町に盗賊を我が物顔で歩かせるなんて、それでも自治団体なの!?ってね!! 「対処する、努力するって、口ばっかりじゃない!! 【窓口】 「……はい、その件に関しましては……でして…… 「……只今上の者が…ええそうです……そうですはい……問題はありません 「……はい、そうです……努力しておりますが……ええ、ご安心ください…… 【男性】 「奴隷所有許可証が欲しいんだが……値が張るな。 「正直迷ってる。 【窓口】 「なにか御用ですか? >奴隷所有許可証がほしい 「奴隷所有許可証ですね。15000貨になります。 「でもそんな大金あなたみたいな子供がもってるわけないですよね。 「あきらめてください。 【役員】 「いい?ここだけの話よ? >はい 「自治団体なんていうけどさ……結局、町長の独断で全てが決定されてるの。 「奴隷制度、堕ちた神殿の封鎖、他にも色々……自分にちょっとでも金が回るようにしてるのよ。 「一度握った権力をそう簡単に奪えないし、ここはずっと『醜い町』なのよ。次の町長もきっと同じ事するわ。 「ま、私は私の仕事さえあれば、それでいいんだけど。さて、仕事仕事。 【兵士】 「なにか用か?用が無いなら帰りなさい。 【子供】 「……。 【少女】 「……。 「ヘンな人とは口をきくなって、お母さんが言ってたから…… 【男】 「……何をしているかって?そりゃ……お前みたいなのが小さい子にイタズラしないか見張ってるのさ。 【戦士】 「醜い町……一体だれがこの町をそう呼び始めて、一体なにが醜いと思ったのだろう? 「この町は確かに弱さで出来ている。でもそれは人間として持っていて当然の弱さだ。 「それは、やはり醜いのだろうか?それとも……もっと…… 「いや、つまんない事を穿り返す事ないよな……俺の悪いクセだよ。 【男】 「ここの娼婦、美人だろ?俺も金さえあればな…… 「でもなんか退屈そうだから、しつこく言い寄ってりゃやらせてくれるかもよ。ヒヒ…… 【娼婦】 「……なんだ、子供じゃない。 「……イラつくわねその目、なんだと思ってるのよ。どっか行きなさいよ……。 「どうせあなたも、すぐ私と大差ない人間になるわ。思い上がらないことね。 「私自信は別に不幸でもなんでもないけど、その目がイラつくのよ。いいからあっちに行きなさい。 「あっちに行きなさいって……人呼ぶわよ!? 「全く……何が楽しいのかしら? 「……はーあ。 「……はぁーーーーあ。 「……。 「…………。 「………………………………っ。 「あー、今日も良い天気。 「……毎日同じ天気だけど。 「……。 「……ちょっと、お茶でも飲んでく? 「ただし、変な期待はしないことね。 >はい 「入んなさい。 「どうぞ、座んなさい。 「……。 「……なんか喋りなさいよ。話がしたいんじゃないの? 「……なにか訊きたい事でもあるの? >僕をどう思っているか? 「知らないわよ……あなたとはさっき会ったばかりじゃない。 「嫌いじゃあ無いと思うけどね。 「……あなたの目が嫌いって言ったのは……なんでだろうね、今思うとよく分からないわ。ごめんなさい。 >どうして家に入れてくれたのか? 「あなたは私に興味があったんでしょ? 「私はどうしてあなたが私に興味を持ったのか、気になったのよ。 「悪い子じゃなさそうだし……ね。 「……私が、すこし寂しかったっていうのも……まあ、ちょっとは、ある、かも。 >なぜこんな暮らしをしているのか? 「こうでもしなければ、この町で生きていけないわ…… 「ここから先にも人の住む世界があるらしいけどね。でもそこも、聞いた話ではとことん悲惨らしいし…… 「でもね……私はお婆さんになりたいの。精一杯生きて、お婆さんになって、“よくここまで生きたもんだ”って言いたいのよ。 「その頃にはきっと世界ももう少しマシになってるんじゃないかな?なんて思うしね。 「……。 「あ、お茶出すの忘れてたね。 「……。 「久しぶりにこれだけ話をして、なんだかスッキリしたわ。ありがとう。 「ふぁーあ……。 「あー…… 「……もしまた来たかったら、来ていいよ。来たくないんだったら、来なくて良いし。 「どっちでもいいんだよ、ホントに。 「じゃあ、またね。 【男】 「……あの人と何を話したんだ?あんまり甘えたりするなよ。 【娼婦】 「……あ、坊や。 「上がってくでしょ? >はい 「……お茶は今切らしてるから、出ないよ。 「自分が来て迷惑じゃないかって……?いいのよ。どうせ客なんて滅多に来ないし。 「今時流行らないもんよ、娼婦なんて。 「そんなことに捨てるようなお金なんて、この町では誰も持ってないしね……一部の権力者を除いて…… 「……。 「でも、気にしないで。とりあえずは充分に食べていけるわ。 「それより、今日はどんなことがあったの?なにか面白い話無い? 「あはは……わかるわかる。全てなすがままにってやつよね? 「……って、もうこんな時間。長いこと引き止めてごめんなさいね。 「気が向いたらまたおいで。 「……お茶は今切らしてるから、出ないよ。 「お客さんもゼロ。商売上がったりよ……全く。 「それよりも何か面白い話聞かせてよ、ほら、この前言ってた…… 「だから結局、丘の上の愚か者が正しかった……と。 「……って、もうこんな時間かぁ……長いこと引き止めてごめんなさいね。 「またおいで。 「……お茶は……御察しのとおり、切らしてます。 「……面目ない……! 「それより聞いてよ。この前言ってた…… 「あはは、それサイコー!それじゃあロッキー返り討ちじゃない…… 「あら、そろそろ帰るの?もうちょっと居たら……? 「って、ウソウソ。無理に引き止めるのもなんだしね。またおいで。 「言っとくけど…… 「お茶なんて高価な物はウチでは出ないわよ。 「……そしたらね、あいつが“1たす1たす1は3!”なんて抜かすのよ?そりゃ色男かもしれないけど、でも…… 「え?うわ、もうこんな時間……? 「もう泊まっていったらどう……? 「……ウソウソ。無理に引き止めるのもなんだしね。またおいで。 「……。 「すんごく、胃が痛いの。 「最近ロクなもの、すら、食べてないから……今日はキャベツ食べたから、まだマシかな…… 「ちょっと何処行くの? 「あー、食べ物なんていいからいいから。座んなさい、話があるの。 「……お茶って、どんな味がするの? 「……でその時“おいジュード、くよくよすんなよ!”って言ったのよ、その牧師さんが。 「……あら、もうこんな時間。じゃあ、続きはまた今度にしましょう。 「え?次くるときにお茶を買ってきてくれる?ホントに?ウソだぁ……高いんだよ、お茶って。 「そんじゃ、またね。 【男】 「……お金がたまったんだ。だから、ここの娼婦と…… >許さない 「お前に何の権利があるんだ? 「なんてな、冗談だよ。本当に好きだったら金で買おうなんて思わない。 「お前もそうなのか?まあ、なんでもいいか…… 「なんで性を超えたところに愛があるのかね?わっかんねえ。 【行商】 「行商でーっす。 「あ、なんかそのお茶をガールフレンドに渡すって面構えねキミ!はっきり言ってナンセンスよ。 「でもまぁ、バチは当たんないかもね! 【娼婦】 「……ふー。 「……ちょっと体調崩しただけよ。すぐ良くなるわ…… 「……ねえ。 「あなた、どうして旅を続けるの? >居場所が無いから 「……居場所、ね。だったら、私の居場所は本当にここなのかしら? 「知っての通り、この世界が故郷だっていう人間はおそらくいないわ。この世界で新しく生まれた子供以外はね…… 「本当は私も自分の世界に向かって歩き出さないければいけないのかもしれない……そんな気がするの。 >そうでもないと思う 「例え、以前住んでいた世界があろうとなかろうと、自分がここを選んだのならそれを誰も咎めないし、誰にもそんな権利は無い、と。そう言うのね。 「……本当に?本当にそう思う? >はい 「自分が選んだ場所……ね。 「……でも、本心を言えば帰りたいんでしょ?その、元いた世界に…… >いいえ 「……じゃあさ、そのさ、前から言おうと思ってたんだけどさ…… 「私ね、なんかもう一人っていうのに疲れたのよ。誰のために生きるわけでもなし、誰も自分の事を気に止めるわけでもなし。 「自分はもう少しタフだと思ってたんだけどね……。一人っていうのは、孤独っていう事はそんなのあまり関係ないみたい。 「あなたにわかるかしら? 「ま、要点を言うとさ……良かったらここで一緒に暮らさない? >はい 「……冗談でしょ。私の面倒見てくれるっていうの?旅も何もかも放棄して? >いいえ 「ほら、やっぱり。ま、あなたは旅をしているのが似合うわ。 「……ああ、お茶?本当に買ってきてくれたんだ……どうもありがとう。 <腐った細道> 【青年】 「盗賊のアジトに行くって!? 「やめた方がいいんじゃ……ていうか、絶対やめたほうがいいよ。 「どうなっても僕は知らないよ。 【盗賊】 「……何か用?俺は別にあんたに用なんて無いけど。あんたも用無いでしょ? 「へー、宝石を返して欲しい……と。 「なんのヒネりも無い返し方するけどさ……お前バカだろ。 「……バカ……ヤロ……。 【盗賊】 「めんどくせーーーー!! 「め……んど……くせ…… 【コロボックル】 「よ!奇遇だね。 <盗賊のアジト> 【トト】 「……!! 【盗賊】 「……何だ、このガキ? 「誰か知ってる? 【盗賊】 「しらね。 【盗賊】 「お前は誰?何しにきたの?ここ何処だか知ってるの? 「さっさと、答えな。 【親分】 「……あ、こいつ知ってるぞ。 「さっき俺がダイヤ盗んだガキだ。 【盗賊】 「親分が? 「じゃあ、何……?お前一人でダイヤ取り返しにきたの?盗賊がワンサカいるアジトに? 「バカじゃないのお前。 【盗賊】 「げらげら 「げらげら 【盗賊】 「親分!このバカどうします? 【親分】 「……なんて言う名前だ? 「ふむふむ、トト坊や、か。 「歳は……16、7ってとこだろ。調度、人生悟ったようなつもりになってるバカな年頃だ。 「そこに若さが加わる。すると、ちょっとした無茶がしたくなるんだよな。しかし…… 「……大人をなめちゃいかんなあ。なあトト坊や。 「一度盗まれた物をまた返せっていうのは……一体どういう了見だ? 「……いや、訊くまでも無いか。どうせ義理とか知人の危機とか、そんなところだろう。 「お前の目は義理人情を重んじるタイプの目だ。そもそも自分本位な奴は、危険を承知でこんな所に来たりしないからな。 「でもな、そんな事は俺達にゃ関係無い。お前がご立派な人間だろうがただのバカだろうがどうでもいいのだ。 「俺達が興味あるのは…… 【盗賊】 「親分、もう夕飯の時間ですぜ……さっさと済ませましょうよ…… 【盗賊】 「親分が喋ってるんだ、この大マヌケ!! 【親分】 「確かに……少しお喋りが過ぎたようだな……腹も減ったし、結論を言おう! 「お前の度胸に免じて、俺とサシで勝負だ。勝ったらダイヤを返して見逃してやる。負けたらさっさと死ね。 「オケ? >ダメ 「我侭なやつめ、お前に選ぶ権利など無いのだ!死ね! 【盗賊】 「へへ、この坊や。親分の拳の破壊力に目を白黒させてやがるぜ……!! 「暗闇状態にさせるマギやアイテムがあったら、親分は手も足も出ないけどな。 【盗賊】 「しーっ!聞こえちまうぞ…… 【盗賊】 「出るぞ……親分の必殺技“スマッシュ”が!! 「あれをモロに食らって耐えた奴はいねぇ。防御でもしてなきゃ、一発KOさ! 「ゴクリ…… 「でもさ……例えばここで“粘着ゼリー"とか使ったら技を回避できるよな……? 【盗賊】 「しーっ!もってたらの話だがな。 【盗賊】 「こいつめ、しぶといな……まさか親分がおされてる……!? 「親分の残りHPは98だ…… 「まずいな…… 「親分の残りHPは49だ…… 「おやぶ〜〜〜〜ん!! 【親分】 「……いて…… 【盗賊】 「……お、親分が…… 「……負けちまった……!! 【親分】 「……ちっ。約束は、約束だ。ダイヤを返そう。 【盗賊】 「お……親分!!大丈夫ですか!? 「おやぶ〜〜〜〜ん!! 【親分】 「……腹が減った。 【盗賊】 「……ば、晩飯の時間だ…… 「もう帰んな、小僧!! 「いい気になるんじゃないぞ、小僧。ホントはボコボコにしてやりたいところだが、それじゃあ親分の面目が潰れちまう。 「親分はお人よしだ……感謝するんだな。ペッ! 【青年】 「え……盗まれた物をとりかえしたって……?嘘だ、まさかぁ…… 「……本当なの?君はすごいな。すごすぎる。 「それに比べて……僕なんか……ダメだ…… <醜い町> 【盗賊】 「おーっと! 「やめとくよ、アンタにゃ勝てねえよ。 【教徒】 「うわ、ほんとに取り返してきてるし……どれどれ……? 「ほぉー、こりゃーまた、イヒヒ!! 「いいだろう、これを受け取りなさい。 大金を手に入れた。 「いい買い物したよ。 【窓口】 「奴隷所有許可証ですね。15000貨になります。 「でもそんな大金あなたみたいな子供がもってるわけないですよね。 「ひっ!ウソォ!!私が一生働いてもこんなに稼げないのに!! 「……し、失礼しました。それでは適当に15000貨頂きますね。 「……個人的な事聞くけどいい?あの大金どうやって手に入れたの? 「……ダイヤを売った?ダイヤなんてどこで……泥棒でもしたの? 「……まあいいわ。私にはどうせそんなチャンスないし。一生慎ましく、安月給で暮らすわよ。 【案内窓口】 「なにか御用ですか? >神殿に入りたい 「隣の窓口へどうぞ。 【窓口】 「なにか御用ですか? >神殿に行きたい 「現在、町長の許可がおりなければ神殿への通行証は発行できません。 【兵士】 「町長に会いたい?アポとってからにしなさい。 「人探しのためにどうしても通らなければいけないだって? 「……ここだけの話。 「最近ピキノピオの奴がよく故障するんだよ。運がよけりゃ通れると思うぞ…… 【奴隷商】 「おお!奴隷許可証を手に入れたか! 「……でもな、クリシュナは売れちまったんだよ。残念だったな。 【トト】 「!! 【奴隷商】 「なーに、他にも奴隷ならいるぜ。どうする? 「なに?クリシュナでなければいけない理由がある? 「だったら今から追っかけて譲ってもらうかぁ?まだそんなに遠くには行ってないはずだぜ。 「確か……長い金髪の騎士だったよ。そいつがクリシュナを買ったんだ。 【黒い髪の少女】 「私だけ売れませんでした。遺憾です。 【奴隷商】 「こんな商売してるけどさ、俺にだって年頃の娘がいるんだ。 「この子達を見てると、何とも言えない気持ちになってくるよ。俺は向いて無いんだろな、この商売。 【女性】 「長い金髪の騎士?ああ、西の方に向かったわ。女の子連れて。 【男性】 「長い金髪の騎士?奴隷つれて神殿の方に向かったな確か。 【兵士】 「ここから進むと堕ちた神殿がある。先の世界に進みたいなら通らざるを得ない場所だ。 「そうそう簡単に通行許可は得られないがね。 【木人形】 「私の名はピキノピオ。 「この堕ちた神殿を通りたい、と。先の世界に進みたい、と。あなたはそうおっしゃるわけだ。 >はい 「ならば自治団体の許可を得なさい。 >ぶん殴る すっかり故障している。 <堕ちた神殿> 【謎の女性】 「……金髪の騎士?私はマギ使いだ。剣なんて握った事もない。 「そういえば、一人通っていったな……長い金髪の騎士で、奴隷を一人連れていたよ。急げば追いつくんじゃないかな? 「ところで、私はこの神殿を抜けるつもりなのだが……ここの敵は少々手に余るようだ。 「恥をしのんで頼む。もしよければ、手を貸してほしい。 >はい 「助かる……が、幾つか忠告しておく事がある。 「まず自己紹介は必要ない。私とお前が組むのはこの神殿を抜けるまでの間だけだ。 「それから必要の無い会話もしたくないな。よろしく。 【トト】 「……。 【謎の女性】 「すまない、本当に助かった。じゃあここでお別れだ。 >引き止める 「ここを出るまでの約束を忘れたのか? 「私は気楽に旅がしたいんだ、すまないが邪魔をしないでくれ。……じゃあな。 <最下層への階段> 【黒い服の男】 「……ようこそ。 「やあ、トト。よくぞここまでたどり着いたもんだ。 「さて……ここは通称、砂の星。名前どおり砂しかない場所だよ。 「まず、人が住める場所じゃないなここは。それでも何人かはここで暮らしているみたいだが……その連中は皆、神の存在を信じる者達のようだ。 「お前さん達は無理をしないで、さっさと次の世界を目指した方がいい。ここが気に入ったのなら、勝手にすればいいがね。 「とりあえずはオアシスに向かうのが良いな。ここからずっと南にある。分からない事があったら何でも聞いてくれ。 >あなたがどうしてここにいるのか? 「私が何故ここにいるのか…… 「ならばトト、お前は何故ここにいる? 「というのは冗談で……私もよく分からないんだ。 「最下層の私とは別者だろうか?私が私でない、というのもこれまた不可解な…… 「まあ、あまり気にすることじゃあない。この宇宙には絶対に解けない謎というものが幾つも存在するんだ。 「気にしてたら人生終わっちまうぞ。 >オアシスってどこ? 「真っ直ぐ南だ。そこにオアシスがある。絶対に横にそれちゃいけないぞ。 「くれぐれも言っておくが、この広大な砂漠で迷子になれば、一貫の終わりだ。真っ直ぐ南だぞ! 【旅人】 「この広大な砂漠がどうして砂の星なんて呼ばれているか、教えてやろうか? >はい 「不思議な事に、ここからずっと東に向かうと、西に辿り着く。 「北に向かえば南に辿り着くし。分かるだろ?ループしてるんだよ。 「だから、この砂漠は一つの星なのかもしれない。その星の中身がさっきまでいた最下層かな……? 「ま、誰もそんな事は気にしないし、調べようともしないけどな。 「それにしてもなんて暑さだ全く…… 【老婆】 「ここで死んだ者達は……皆、神の試練に耐えた者達。 「今頃はきっと、極楽で至上の暮らしを営んでおることじゃろう。 【男性】 「ここはとにかく食べ物と水が無いんだ。おまけにこの暑さ。 「でも俺はここで暮らす。醜い町がどんなだったかお前も知ってるだろう? >そうでもなかった 「よく言うよ。自分に負けた愚か者達の末路があれだ。 「ああいう連中にはいずれ天罰が下る。神が最後に守って下さるのは、心が純潔なものだけだ。 「だから俺は心の純潔を守るためにここで暮らす。ま、あんたには無理だろうね。 <オアシス> 【青年】 「やあ、僕です!腐った細道にいた……何とかここまでこれました!! 「え、覚えてない?そうですか…… 「それはともかく、さっき砂漠で恐ろしく巨大なモンスターに遭遇して、命からがら逃げてきたところで…… 「そのときのドサクサでお金やアイテムをいろいろ落としちゃったんです。ホント、ダメだな僕は…… 【モノシリドリ】 「こんにちわ。私はモノシリドリ科モノシリドリぢゃ。今日はキミにいいことを教えてあげよう。 「睡眠状態に陥ると行動ができないうえに防御力が半減してしまうのぢゃ。 「一発ガツンと殴られればほぼ回復するんだけどね。おまけに動物以外には効きにくかったり効かなかったりする。 「麻痺状態は大方どんな種類の敵にでも通用するが守備力は変わらないのぢゃ。ついでに殴られただけじゃあ状態は治らない。 「相手や状況によって使い分けるのがスマートなやり方だと思う、個人的に。 【砂漠の商人】 「オアシスの残り少ない水を飲みたいなら、15貨よこしな。 >はい 「そういえば関係ないけど、噂で聞いたんだ。どうも盗賊団の連中が“王家の指輪”とやらを探しているらしい。 「ピラミッドの財宝らしいが、どこにあるのか誰も知らないんだ。 【旅人】 「最下層への階段の墓地にいる連中を見たか?神様を本気で信じてる人達だよ。 「確かに、何かの支えがなけりゃとてもこの砂漠では暮らせないわなあ。暑いし腹減るし、俺なら完璧まいっちまうよ。 「いや、それとも……逆なのかな?あんな連中だからこそこんな場所に住んでいるとか。 「だって醜い町は“純潔"なんて抜かしてる連中の性には、到底合わないだろうし……次の世界に進む事も出来ないし……だろ? >何故次の世界に進む事ができない? 「知らない?ピラミッドだよ。王の墓を通らなきゃ次の世界には行けないんだぜ。 「つまり、上の世界に行くのも下の世界にいるのも、連中にとっては“神を裏切る行為”なのさ。 「神を仰ぎ、神に護られ、また神を恐れる連中……か。神様はこれで満足なのかね? 【学者風の男】 「私の名はギルモア。謎だらけのこの世界の事を調べている。 「しかしこの砂漠は大体調べたつもりだし、そろそろ上へ上がろうかと思っているのだが…… 「上の世界への通り道でもあるピラミッドは如何せん敵が強すぎるために、私一人では到底通り抜けられないのだ。 「君、私と一緒にピラミッドに向かうつもりは無いかね?もちろん、礼はするよ。 >はい 「よし、決まりだ。えーと…… 「トト君か。よろしく頼むよ。 「砂漠の位置検索なら任せてくれ。マギで使えるよ。 <砂の星> 「……はぁ、はぁ……み、水を…… 「ゴクッゴクッ……ぷはー! 「た、助かりました!ひじょうに!!あなたは恩人です!お礼にこれをどうぞ! <ピラミッド> 「大変だ。亀のロビンが殺された。 「物騒な事だなあ。一体誰が殺したんだい? 「ブラームスの姉であるキャメリがスーザンから聞いた話では元々はディオンの物だった甲羅粉砕機を兄のブラームスが  売り払って友人であるスーザンの元夫であるジャンの手に渡ったらしいけど、 「ディオンの誕生日に彼の親友であるロビンがジャンに誕生日には甲羅粉砕機をプレゼントするようにと頼んだのだが  その時にはすでにジャンとスーザンはよりを戻していたらしく 「甲羅粉砕機はスーザンのものになっていたがジャンの兄のブラームスが無理矢理それを奪ってスーザンの弟のディオンに  プレゼントしてしまったらしい。 「しかしロビンが自分の姉であるキャメリに手を出そうとした事を知った親友のディオンはロビンの体を甲羅粉砕機にセットして  一撃のもとにその甲羅を粉砕し、彼を殺害したってわけさ。 「つまり、誰と誰が赤の他人なんだ? 「ロビン ロビン ロビンロビンロビン...         ロビン     ロビン!!              ロビン!! 「WllWMIIlMMW…… 【教徒】 「消えろ、小汚いブタめ。 【教徒】 「消えろ、薄汚れたハエめ。 【老人】 「王の墓を荒らそうとする気か……立ち去れ!! 【ギルモア】 「しかしご老人、ここを通らねば我々は上に行けないのだが…… 「だから墓を荒らすつもりなんて毛頭ない。そこをどいてくれ。 「それでもどかないというなら、こちらも考えるぞ。 【老人】 「……。低俗で汚らわしい魂め、地獄へ堕ちるがいい。 【トト】 「……? 【老人】 「地獄で悔やめ……バカ者めらがっ!! 「君、死んだよ 『はは、まさか……死んでなんてないだろう。 「いーや、死んだね。だってここは地獄だもん。 「見てごらん、何が見える? 『真っ暗闇が見える。 「見えないから真っ暗闇なんだよ。 「まずあんたは生きる為のエンジン、即ち<生命>を奪われた。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、なーんもなし。  こうして感覚の声が聞こえている気がするだけ。 「でも思考だけは永遠だよ。君の意思、魂が存在しているからね。 『ずっとコレ? 「死んだんだから、当たり前だよ。ずーっと、コレさ。 『それじゃ、退屈だ。 「みんな死んだらそうなるの。じゃ、次の人の面倒見なきゃいけないから…… 『待てよ、待ってくれよ、待って…… 『ちょっと待ってってば。もう少し詳しく聞かせてくれよ。 『おい、君はなんて名前なんだ?ここは地獄かい?神様の怒りにふれたから?ごめん、ごめんなさい。もうしませんから…… 『……おいってば、なんとか言ったらどうなんだ?デッカイ声だしちゃうぞ? 『うわああああああーーー!! ……。 『うわああああああーああああああーー!! ……。 『うワぁぁぁぁあアアアアああぁぁァァァァぁ!!!! 【ギルモア】 「……な、なんて声をだすのかなぁ……全く。 「……地獄?何を言ってるんだトト君。さっさとここから脱出しないと、本当に閻魔様に迷惑かけることになるぞ。 「さ、行こう。 【謎の女性】 「……奇遇だな、少年。私もあの老人に突き落とされた。 「しかし皮肉なものだ……こっちに来てみろ。 【ギルモア】 「これは……このピラミッドの墓主が眠る棺のようだ。 【謎の女性】 「あの老人は私たちを地獄に突き落としたつもりらしいが…… 【ギルモア】 「地獄で眠っていたのは王の方だったか!あの老人も、墓荒らし達を自分の手で墓の元へ送っているとは夢にも思ってないだろうな…… 【謎の女性】 「裏に何か財宝もあるみたいだけど……しかし、そんな簡単に墓泥棒を許してくれるわけは無いと思う。なんらかの罠があるハズだ。 「まあ、盗るつもりならせいぜい気をつけなさい。 【ギルモア】 「ちょっとお待ちなさい。 「お嬢さん、一人ではあまりに危険すぎる。ピラミッドを出るまでの間だけでも我々と行動を共にしては如何かな? 【謎の女性】 「……そうだな。ただし、幾つか条件がある。 「まず自己紹介は必要ない。私とお前達が組むのはこのピラミッドを抜けるまでの間だけだ。 「それから必要の無い会話もしたくない。では、よろしく。 【ギルモア】 「……そうか、よろしく。私の名は…… 【謎の女性】 「必要ないと言った筈だ、自己紹介は!! 【ギルモア】 「……それは、すまなかったね。じゃあ先を急ごう。 【謎の女性】 「……よろしく。 【ギルモア】 「……嫌な予感がするな。 「それに、我々にとってそれほど貴重なアイテムが眠っているとも思えないが…… >開けちゃえ! 王家の指輪を手に入れた! 【ギルモア】 「しかし…… 「私達の名前ぐらい……聞いてもらえないものかな? 【謎の女性】 「……勝手に。 【ギルモア】 「ギルモアだ。学者をやっている。よろしくお嬢さん。 >名乗らない 「おやおや、トト君。子供だな……相手は女性なんだよ。 【謎の女性】 「トトにギルモア…… 「私はそう他人にベラベラと名を名乗るつもりは無い。 「パーティの一員としての力は貸しているつもりだ。女が欲しいのならば他を当たってくれ。 【ギルモア】 「こりゃ、手堅いな…… 【老人】 「それは王家の指輪!! 「あ、あなたこそが新しきこの地の王!!あなたにはその資格がある!! 「どうか玉座に……玉座におつき下さりませ!!! >いいえ 「待ちます、待ちますぞ……!!いつまでも私どもは待ちますぞ!! 【ネコ】 「サバクニ ウカブ コドクノ ハカバ…… 【猫】 「ワガ トイニ コタエヨ。 「セカイノ チュウシンニ スム イッピキノ ムシ…… 【謎の女性】 「下らない…… 「……サソリ、か? 【ギルモア】 「世界の中心に住む虫?はは、簡単だよ! 「セカイの真ん中だろう?答えは“蚊”だよ。イージーだね。 「どうやら……正解だったようだね。 【謎の女性】 「私の名は……エリナー。 「エリナー・リグビー。よろしく。 【トト】 「……。 【ギルモア】 「……そうか。 「よろしくエリナー。 【猫】 「ワガ トイニ コタエヨ。 「ナニモノモ ソレヲ モチ ナニモノモ ソレヲ ウゴカセ ナニモノモ ソレヲ モチアゲルコトハ デキナイ。 【ギルモア】 「誰もが持っている……それは即ち何者かであるという存在概念そのものであり…… 「持ち上げる……物理的存在……つまり重力からの解放……理論の盲点が……盲目者が蛇に怖じない……恐怖の味噌汁…… 【エリナー】 「下らない…… 「……影だ。何者もそれを持ち、例え赤子でも這いさえすれば動かせるが、どんな力自慢も持ち上げる事はかなわない。 【ギルモア】 「どうやら……正解だったようだね。 【エリナー】 「すまない、本当に助かった。じゃあここでお別れだ。 【ギルモア】 「お嬢さん、そんなこと言わずに……もう少し一緒に旅をしようじゃないか? 「ここからの旅もやはり辛いものになるだろうし……攻撃マギを持たない我々二人では少々厳しい。このことはやはりトト君も賛成だろう? >そんなことない 「やれやれ、シャイな子だ……今の若い子達は自己主張ばかりで、肝心の協調性に欠けるな。 【エリナー】 「お前こそここを出るまでの約束を忘れたのか? 「……まあいい。お前たちには貸しがある。気の向くうちは手を貸そう。 <孤独の洞穴> 【男】 「まだお前達に語るには早い。真実を知ったとき、私の知ることを教えよう。 <盗賊のアジト> 【盗賊】 「……!!そ、それは伝説の……王家の指輪!! 「譲る気は無いか!?なんでも言うこときくよ! <ピラミッドへの階段> 【黒い服の男】 「……ようこそ。 「やあ、トト。よくぞここまでたどり着いたもんだ。 「さて……ここは通称、汚れた湿原。外から雨の音が聞こえるだろう? 「この雨は今までずっと止んだ事が無い上に、すごく汚れている。決して最初から汚れていた訳じゃなかったんだがね… 「まあとにかく、雨には気をつけるんだ。 「これを着ればまあ無いよりマシだろう。くれぐれも、着るのを忘れちゃいけないぞ! 「腐った細道、醜い町……やっと太陽を拝めたと思えば、こんどは汚れた雨! 「この世界を創造した神も、つくづく意地悪な性根の持ち主だな。頑張るんだぞ、トト。 【青年】 「やあ、僕ですよ!いいかげん覚えてくれました? 「え、覚えてない?そうですか…… 「それはともかく、今日はいろいろアイテム持ってるんです。 「町までもう少しだけど……汚れた雨の影響なのか、マギがちっとも効かない敵がうようよしてるんです! 「ちなみに僕はマギ使いだったり……ハハ……。どうしよう……? <屋根の家> 【兵士】 「なんだ貴様ら?雨に濡れているじゃないか!!毒を家の中に振りまく気か?そこでじっとして乾かせ!! 「一分ぐらいはじっとしろよ! 「……よし、まあいいだろう。 【男性】 「隔離施設にはこの汚れた雨に冒された病人どもが住んでいる。 「おまえはまさか病気もちじゃないよな……? 【女性】 「はるか北東に隔離施設がありますわ。 【子供】 「おとうさんはあめのどくにやられて、かくりしせつにいます。 「はやくよくならないかな…… 【商人】 「上の世界を目指すなら、ここから北西だ。無限大木という木をずっと上ればいけるらしいぞ。 【男性】 「俺は下の世界から来た者だが…… 「みろ、この世界を。神の意志に背いた禍々しい装置のおかげで……神の怒りを買い、大地を腐らせた! 「それでもここに執着して生きる奴らの気がしれんね。 【女性】 「あの浄水炉のおかげで汚れた湿原は更にその汚染を悪化させていることに……私たちは気づいている! 「そのうち浄水炉では間に合わないほど酷い濃度の毒雨が降るようになるでしょう。それは決して遠い未来ではありません。 「そして私たちは死ぬ。死んで、この腐敗した大地だけが残るのです。 「もう浄水炉を手放すことは出来ないし、ここに慣れきった私たちは違う世界では暮らせない。ただ虫篭に閉じ込められて、死をまつだけなのです。 【子供】 「うちのねえちゃんはとんだパラノイアさ。毒でアッチがおかしくなっちゃってんだ! 「ところで、ベッド貸せるけど休んでく? 【男性】 「ギトモ博士のおかげで俺たちは生きていける。 【男性】 「きれいな水が無ければ人は生きていけない。我々が生きていけるのは博士の浄水炉のおかげなのさ。 【男性】 「ここの水があるから我々はやっていける。 「全ては浄水炉のおかげだよ。 【若者】 「ここが浄水炉だ。危ないよ。 【ギルモア】 「……これはマギを動力にした浄水炉のようだが……この原理は良くない! 「汚れた雨を更に汚染しているのはこの装置から湧き出た不純な魔力では……? 【ギトモ博士】 「わしが、浄水炉を開発したギトモじゃ。全てはちょっとずつ良くなっておる。 【ギルモア】 「あの浄水炉の使用を今すぐやめたまえ。汚染を悪化させていることに気づいていないのか!? 【ギトモ博士】 「……ふん、厄介な奴がまた出てくる。 【ギルモア】 「今すぐ使用を止めないと、そのことをここの住民たちに公表するぞ? 【ギトモ博士】 「ああ、気の済むようにすればいい。だが事態はなにも変わらない。 「あの浄水炉が毒を撒いている事ぐらい、ここの住民たちはとうに気づいているのだ。 「そしてお前のような反対者もたまに出てくる。だが今まで一度たりとも浄水炉は止まったためしがない。 「なぜか?それは賛同者のほうが圧倒的に多いからだ。 【ギルモア】 「賛同者は事の悪質さに気づいていないのだ! 【ギトモ博士】 「自分に害が無ければ都合のいい解釈をするものだ。 「『汚染しようがどうせ浄化するんだ』『そのうちもっといい浄水炉ができるだろう』『自分が死ぬまでの間に大した支障はない』 「それでもたまに反対を押し切ろうとする馬鹿者がいてしばしば隔離施設に放り込まれるがな…… 【ギルモア】 「あなたには科学者としての誇りはないのか!! 【ギトモ博士】 「私か?私は造るだけだ。そして使うのは彼ら。賛同者、反対者、それらがひしめき合った答えがすなわち現状なのだ。 「抗うことなど無い。全てはなすがままに、人生の基本だよ。 【ギルモア】 「……見ていろ、エゴイストめ! 「すまない、トト君。私はここに残る。 「新式の浄水炉を造ってここの大地と人々を救いたいのだよ。 「善の意思でもなんでもない。これは……科学者としての意地だ。理解してほしい。 >一緒に残る 「本気かね?いったいいつ……いや、完成するかどうかすらわからないのだよ? 「ここで旅が終わってしまうかもしれない。それでもかまわないのかね? >それでも一緒に残る 「そこまで言うのなら……ありがとう、とても心強いよ! 「では早速調査を…… 【エリナー】 「私がここに残った事を疑問に感じていると? 「……興味があるうちは成り行きを見守っているつもりだ。退屈したら勝手に発たせてもらう。 「それにしても……ギルモアの帰りが遅いな。隔離施設の方に向かったらしいが。 「迎えにいってみるか。 【若者】 「ギルモアさんの事は尊敬しているが、無駄だよ。ギトモ博士でさえ造り得なかった無害の浄水炉なんて…… 【男性】 「順調かい? 【男性】 「ギルモアはギトモ博士に嫉妬しているんだ。ロクなもんじゃない…… 【男性】 「応援はしているが、無理だろうな…… 【男性】 「浄水炉はマギを動力にしているんだ。すばらしいアイデアだよ!  それを超えるアイデアは、今のところありえないんじゃないかな。残念だけど。 【ギトモ博士】 「ギルモアとやらはまだやっているのか?無駄なことを…… 【男性】 「新式だかなんだか知らんが、同じ事だ。 「結局は神への冒涜にすぎん。しかるべき結果に終わる。 【女性】 「あの科学者さんが新式の浄水炉を作り、この町と世界を守ろうとしているのは良く分かります。 「ですが……結局問題は違う穴から湧き出る気がするのです。 「私たちはどこへ向かおうとしているのでしょう? 【兵士】 「お迎え?隔離施設へ?くれぐれも気をつけてな。 <隔離施設> 【番人】 「ダメだ、もうアンタをここから出すわけにはいかない。アンタは毒にかかってしまった!! 【ギルモア】 「なにを言う、私は健全だ!私をここから出してくれ! 【番人】 「さあ、奥の部屋に行くんだ!いつまでも抵抗するならこっちだって考えるぞ? 【ギルモア】 「完成したんだ!浄水炉が、完成したんだよ!!私をここにぶち込みたいならそうすればいい!だがこの設計図だけ…… 「はっ!!そこにいるのはトト君!!浄水炉が完成したぞ、みたまえこの設計図を!ついにやったんだよ!! 【番人】 「君か。彼は毒で頭がやられている。マトモに取り合わないほうがいい。 【ギルモア】 「私を狂人扱いするならそうしろ!!しかし設計図だけ、この設計図だけ屋根の家に届けてくれ!!たのむ!! 【番人】 「さあギルモアさん、鼻血を拭くんだ。そしてゆっくり横になって…… 【ギルモア】 「どけ!! 【番人】 「この…… 「さあ、設計図でもなんでも受け取ったならとっとと出て行ってくれ!! <屋根の家> 【兵士】 「やあ、君か。 【ギトモ博士】 「なに?完成した?新式浄水炉が……!?設計図を見せてみろ!! 「……………………。 「私をからかっているのか?なんだこれは、矛盾だらけじゃないか!!こんな設計図、サルでも書かんぞ…… 「彼は大丈夫なのか?いま何処にいるのだ?君からもう諦めるように伝えてくれ。このままでは彼のオツムの方がもたんだろう……! 「だから無駄だと言ったんだ…… 【男性】 「器じゃなかったんだよ。 【男性】 「だから嫉妬はロクな結果を生まないんだ…… 【男性】 「やはりダメか……いいんだ、期待なんてしてなかったからね。 <隔離施設> 【番人】 「君か。入りたまえ。 【男】 「ここの水は……飲んじゃいけない水だぜ。……俺たちには関係ないが。 【少年】 「なんかだるいよ……ママ…… 【男】 「私の嫁は……やはり雨の毒で死にました。 「気分が悪いといって鼻血を出し、それから数分とたたぬうちに帰らぬ人に…… 「しかし、今考えるとそれは幸せだったのかもしれない。こんなところへぶち込まれるよりは…… 【少女】 「あ、あなたは!私です、奴隷商で売られていた……覚えていません?それならそれでも別にいいんですけど…… 「え?クリシュナ?違います。私の名は……まあ名乗るほどの者でもありませんよ。 「え?病気?いや、具合が悪いのは私ではなくご主人様なんです。奥のベッドで休まれてますよ。 【主人】 「いかにも私があの奴隷の主人だ……。雨にやられてこのザマだ。ハァハァ…… 「クリシュナ?ああ、あの髪の赤い奴隷か……どこかの騎士に連れられているらしいが… 「すでにもう上の世界に上っていると聞く。追うなら早いほうがいいな……西の無限大木からだ。 【男】 「屋根の家の奴ら、こんな申し訳程度のメシを送ってきやがって……こんなもんで自己満足しやがって…… 【老婆】 「世界はみーんな嘘っぱち!だーれもいないしなーんにもない!げぇほげぇほ! 【男】 「そこの婆さんにマトモに取り合わねえほうがいいぜ。こっちが変になっちまう。 【ギルモア】 「なにぃ!?私の設計図を……!? 「私は正気だし、あの設計図はそれは完全な……そう、完全なものだった!芸術品だよ!!嫉妬に狂ったのは……あっちこそだ!! 「頼む、トト君!!あの設計図を見て君が浄水炉を組み立ててくれ!! 「分かっている、私がどんな無茶を言っているか……しかし、あと一歩、あと一歩なのだ…… 「それとも、やはりあのギトモと同じで私を狂人だと思うか?いや、いい。答えなくていい。 「私は君を信じている。だから、答えを聞かずにこのまま眠ろう。それが私なりの誠意だ。 「わかるな……?頼む、頼んだぞ、トト君…… 【男】 「死んだか……なに、珍しいことじゃないさ。 【男】 「冥福を祈るよ。 <屋根の家> 【兵士】 「聞いてくれ!!ついにギトモ博士が……無害の浄水炉を開発したんだ!! 「……。 【男性】 「アンタはここで暮らすのかい?いや……無理だろうね。 「ギルモアとかいう科学者のことで、ここやギトモ博士を恨んでいるんじゃないか? >そんなことない。 「だが私達は歓迎しない。ギスギスしたくないからな。 【女性】 「新式の浄水炉は見事なものですわね。 【ギトモ博士】 「……。つい今しがた完成させたよ。新式の浄水炉をね。 「……その目はなんだ?私が設計したのだ。文句はあるまい。 「……ギルモア君はどうしている?死んだ?いや、そうか。それならいいんだ…… 「皆、遅いな。新式の浄水炉がそれほど珍しいか…… 「私をいつまで一人にするつもりだ? 【男性】 「ギトモ博士は……いや、もういい。 「ギルモアさんによろしく言っておいてくれよ。俺は尊敬しているってな。 【若者】 「結局ギトモさんなんだね……なんかな……ま、いいや。 【男性】 「……す、すばらしい!! 【男性】 「これこそまさに天才のなしえる業だ…… 「なあ、アンタもそう思うだろ? 【男性】 「なんと美しい……! 「……ギルモアさんによろしく伝えてくれ。関係……無いがね。 【女性】 「みんな気づいています。あの浄水炉はギルモアさんが設計したものだと…… 「ギトモ博士は……ああいう人なのです。自分の黒い部分は見ぬふりをして……いつしか他人からも見えていない気になって…… 「病気なんです。どうか……あまりいじめてやらないでください。 【兵士】 「ま、そういうこった。 <隔離施設> 【男】 「アンタのお仲間の学者さん……えらいお人だったな。 「ああいう人を見れるだけで生きている価値がある。こんなところにぶち込まれていても、本心からそう思うよ。 「もしかして、あんたはあの人のお弟子さんか? >違う 「じゃあ仲間か。手厚く葬ってやれよ。 <無限大木> 【妖精】 「この木の中にはたくさんの虹ホタルが住んでいます。 「彼らが私たちの目の前を過ぎった時、暗い視界が一瞬だけ虹色に輝きます。 【エリナー】 「流石に二人だとキツイな…… >そうでもない 「お前は見かけによらずタフだな。頼りがいがあるのか、空威張りなのかは知らないが…… 「とにかくギルモアの抜けた穴は大きい。早く新しい仲間を見つけないことには、命がいくつあっても足りないぞ…… 【妖精】 「そこの宝箱には黒い甲冑が入っていました。着用したものに無双の力を与える魔法の甲冑…… 「しかし、悪しき呪いがかけられていて、死ぬまでその甲冑を脱ぐことはできないのです。 「さっき、二人の旅人がそれをもっていきました。気の迷いを起こさなければ良いのですが…… 【エリナー】 「木の中に木が生えている。 「…………あまり良い趣味とは思えないな。 <何処でもない場所> 【黒い服の男】 「……ようこそ。 「やあ、トト。よくぞここまでたどり着いたもんだ。 「さて……ここは通称……何とも呼ばれていない。所詮、からっぽの世界なのだよ。何かはあるはずだがね。 「まあ……単なる場所さ。何の意味も無く、何の価値も無い。通り道の世界と思っていい。 「ただしちょっとした危険はある。馬鹿げた話だが、怪獣がいるんだ。ここではザコの代わりに大怪獣が徘徊している。 「くれぐれも気をつけるんだぞ。 「存在に何の意味も価値も無い場所……宇宙そのものにだって、意味や価値があるかどうか怪しいものだがね。 「だがヒトにとっては掛け替えの無いものだ。そして、この世界もそうなのだろうか……? 「謎が多いと人生楽しいな、トト! 【モノシリドリ】 「こんにちは。私はモノシリドリ科モノシリドリぢゃ。今日はキミにいいことを教えてあげよう。 「軟体生物には打撃系の攻撃が通用しにくく、空を飛ぶ敵には弓矢の攻撃が効果的で、巨大な敵には大剣がダメージ大なのぢゃ。 「相手や状況によって使い分けるのがスマートなやり方だと思う、個人的に。 【金髪の騎士】 「裏切る気か……貴様!恩を忘れやがって!! 【黒騎士】 「裏切るだなんて、人聞きが悪いなぁ…… 「ハナから、あそこから逃げるために利用させてもらっていたまでだよ。 「そして……この甲冑さえあれば、お前なんかに負けはしない。覚悟しなよ! 【金髪の騎士】 「馬鹿な!その甲冑が呪われたものだと……貴様も知っているだろう!!死ぬまで鎧を脱げないのだぞ!? 【黒騎士】 「生きるためだからねぇ。仕方ないでしょ。 【金髪の騎士】 「……くっ、このガキ…… 【黒騎士】 「……バーカ。 「……。 【岩】 「科学の発達によって、最近はなんとキリスト以外の体からパンとぶどう酒が作れます。 「出来上がったモノはまるでスポンジと嘔吐したワインです。素晴らしい! 「噛んでも噛んでも味は無し、他人の吐瀉物を啜っては誰かが吐き、また誰かがそれを啜ります。 「おや?隣の彼女は超おいしいと絶賛してますね。やっぱり人間は素晴らしい! 「WllWMIIlMMW…… 【??】 「紙切れを知ってるかい?持ってるかい? 「集めれば、いいことあるかもよ。 【男】 「かっかっか!こりゃ傑作だ!! 「お前もそう思うだろう? >はい 「だったら貴様もやればいいじゃないか! 【兵士】 「……。あれ?なにやってんだ俺? 「確か上の世界を目指してのぼって……いつのまにこんなところに? 「まずここから出なくちゃ……出口は何処だ? 「入ってきたからには出るところがあるはず。どこから入って……いや、そもそもなんでこんなところにいるんだ? 「というか何してたんだっけ……?何して…… 「今は何してるんだ?そうそう、何してたか考えてたんだよな。で、今の前は何してたんだ? 「上の世界を目指して……じゃなくて、確かそれにはここから出なきゃならないんだよな。 「……じゃあ出るぐらいならそもそもなんでこんなところに入って……あれ?どうやって入ったんだ?俺…… 「え?なにやってんだ俺……? 【虎】 「私らにかまわんでください。あんたにはあんたの人生があるでしょうに。 【子供】 「にいちゃん、一緒に跳梁跋扈しようよ。 【鳥男】 「トマトジュースでもいかがかな? >いいえ 「不安なのか?いや、いいんだ。わかるよ。 【豚】 「ここから出たい?なあに、出るときがくれば勝手に出られるさ。それまではどうあがいたって出られないの。 「なんだって、そういうもんだろ。 【黒騎士】 「二人とも、大丈夫かな? 【エリナー】 「すまない……助かった。 「私の名はエリナー。こっちはトトだ。 【黒騎士】 「僕は……ク、いや、えーと…… 「へ……ヘイムダルだよ。 【トト】 「……? 【エリナー】 「……ヘイムダル。 【ヘイムダル】 「えーと…… 「とりあえず事情があってこの甲冑脱げないんだけどよかったら一緒に上に連れて行ってくれないかな?ここから先は一人じゃキツいみたいだから…… 「腕前の方はさっき見せた通り。きっと役に立てると思うよ! 【エリナー】 「……。 「……トト、任せる。 【ヘイムダル】 「どうかな? 【トト】 「……。 >いいよ 【ヘイムダル】 「恩にきます!ヨロシク! 【エリナー】 「……一つだけ聞きたい。さっきお前が突き落とした騎士は何者だ? 【ヘイムダル】 「え、騎士……?さ、さぁ〜……身に覚えがないなぁ……うん。 【エリナー】 「……ふん。答えないなら信用されないものだと思え。 【ヘイムダル】 「……まあ、それならそれでも。 【トト】 「……。 【教徒】 「はいはい。レンタル船屋だよ。レンタルは25000貨ね。 >はい 「はいはい。返却は事務所の方までヨロシクね。 「事務所?どこにあるか知らないの?頭の中からっぽだな!うひゃひゃ! <ふきの塔> 【女性】 「ここはふきのとう。ここもまた世界と世界の掛け橋です。 「山から下りてくる人攫いの問題で、私達は困っています。 【女性】 「上の氷の世界には人攫いがおります。ときどき、ここからも何人か連れて行かれるのです。 【男性】 「人攫いを前に、私たちはなすすべもありません。 【女性】 「人攫いは……私たちにかなう相手ではありません。旅の方、どうかあれを退治してください! 【男性】 「人攫いは山から降りてくる山男だとか…… 【老人】 「決まっておなごが攫われる。奴もとんだ好色者じゃ! 【女性】 「……。ここにいつまでいても仕方が無いのはわかるけど…… 「引き返して、どこに戻れというの?醜い町?砂の星?汚れた湿原? 「……いや、いっそ羊水の海という手もあるわね。く……ククククク…… 「……はあ。 【男性】 「怪獣どもがわんさかいて、大変だっただろ。 >いいえ 「やるなぁ……そういえば精悍な感じがする。修羅場をくぐってきたんだな。 【男性】 「しかし、あの怪獣どもは一体……?生き物というよりは、まるで子供の創造物だ。 「そう……子供の頃の純粋な恐怖そのものだった。今までと違う何かに、我々は近づいているのかもしれない。 「近づく……一体何に近づくというのだろう?我々はどうして上りつづけるのか?どうして世界の頂上を知りたがるのだろう? 「何も無かったら……そのときは一体どうすればいいのだろう。 【男性】 「ネタばれしちゃうぞ? >いいえ 「やだね、言っちゃうぜ。 「次の世界が最後だよ。うそじゃない、行ってみれば分かる。 「だから皆、こんなところでぼんやり過ごしているのさ。俺たちの旅は終わったんだよ。 【黒い服の男】 「……ようこそ。 「やあ、トト。よくぞここまでたどり着いたもんだ。 「さて……この上は通称……氷の世界 名前の通り、ちょっとばかり涼しい場所だ。 「山に人攫いがいて……度々ここの住人を攫っていくようだが、理由はわからない。 「相当凶暴という話も聞くぞ。くれぐれも気をつけてな! 「ところで…… 「この上にある山の頂上が世界の一番上だという話は聞いたことがあるか? 「……キミはそれを信じるか?それとも自分の目で確かめないと気がすまないか? 「君のことだ。世界のてっぺんに何も無いのなら何も無いということを見届けなければ気がすまないのだろう。 「一つだけ言っておこう。 「山に向かった多くの者達が帰ってこない。死んだのか、あるいは…… 「……あるいは、また違う方向に世界は続いているのかもしれない。私の勝手な憶測だがね。 「気をつけてな、トト! 【青年】 「やあ皆さん。さすがに覚えてくれたでしょ。 >いいえ 「だったらそれでかまわないさ!僕もここまで来れたんだ、自分に自身を持つよ。なんてね。 「ところで…… 「世界はこの上でお終いだって、みんな言ってるよ。この上の氷の世界にはただヘンテコな山があるだけだ。 「山へ行った者は大体が山男の餌食になって……残りは以前の世界に引き返している。 「で、僕は……ここで終わりにしようと思うんだ。もうこれ以上上がないのなら危険を冒して見に行く必要も無いし、 「そもそも……こんなところまで何しにきたんだか。元の世界に帰るため?より良い場所へ向かうため?まだ見ぬ場所を知りたいため? 「僕は……まあ、いいか。皆さん、くれぐれも気をつけて。 <がらん洞> 「虚空に浮かんだ亀の甲羅 滲んだ自我と破れたガラス 赤と青のギターの音 深い深い深い井戸の中へ 「WllWMIIlMMW…… 【子供】 「そこにあるような岩からは……不思議な電波が流れています。 「同じ波長でも、受信する精神は一つとして同じものは無い。 「つまり、例えば私とあなたでも全く違う言葉があの岩から聞こえてくるのです。 「それはあなただけの言葉ですから、私には聞こえないし、教えてもらっても知ることすらできない。 「大切にすべき言葉です。 <悲しみの山> 【兵士】 「山に登るのは勝手だけど向こう側は崖になってるから気をつけてね。落ちたらもう戻って来れないよ。 【モノシリドリ】 「こんにちは。私はモノシリドリ科モノシリドリぢゃ。今日はキミにいいことを教えてあげよう。 「衰弱状態という珍しいステータス異常があるが、これは攻撃力、守備力、敏捷性の三つが半減してしまうのぢゃ。 「回復する手段も少ないので、もしかかったらおとなしく防御するのもスマートなやり方だと思う、個人的に。 【青年】 「ひゃっほー!やったぞ!俺は世界の一番上に来たんだ! 「ここが……ここが世界の一番上なんだ!ざまあみろ!はっはっはー! 「はは……は…… 「ちきしょう!俺を元の世界に……元の世界に返しやがれ!!ここは俺の世界じゃねぇ!! 「ここは何処なんだ!俺は誰なんだ!どうすりゃいいんだよぉぉぉ! 「うおおおお!うおおおおおおお!! <山男の穴> 【女性】 「もうすぐあいつが帰ってきます……早くこの山から立ち去ってください。 【女性】 「山男は……攫ってきた女を襲い、子を宿し、産ませては自分に似ていないと言ってそれを食らうのです。 「神経の弱い母親は発狂し、また、ほかの者もこの最悪の環境のせいで次々と衰弱死していきました。 「こうして残っているのは私達だけ…… 「といっても、私達ももう長くはないだろうし、どうせ山男がまた新しい女性を攫ってくるのでしょうが…… 「……。 【女性】 「山男にふきの塔で攫われてから……一体どれほどの月日がたったでしょうか? 「……。 「うう……。 【女性】 「山男は……あれは狂人です。でも、誰もあの者を止めることはできない。人は鬼には勝てません。 「私達はもはや助けを諦めています。あなたたちだけでもお逃げください……! 【人攫い】 「なんだ、キサマら……? 「……俺の女に手を出すつもりか……? 【女性】 「もう、お止め下さい!この方達はただここに迷い込んだだけで…… 【人攫い】 「イサヨ……どけ。ここは俺の縄張りだ。 【イサヨ】 「皆さん、お逃げ下さい!! 【人攫い】 「これは男同士の問題だ、女ごときが邪魔をするなっっ!! >イサヨを人質に取る 【イサヨ】 「ひ……!? 【人攫い】 「……何の真似だ? 【イサヨ】 「お、お止めください!こんなこと、無駄です!あいつにとって私達など所詮虫ケラ程度にも…… 【人攫い】 「……俺の怒りがまだ抑えのきくうちにそいつを放せ。 「放せといっているのがわからんのか!! 【トト】 「……。 【人攫い】 「貴様…… 「ぬお……! 【イサヨ】 「あ…… 「……。 【女性】 「これでよかったのです…… ……。 【女性】 「死んだ子供達は帰ってきません。 【女性】 「今更どこへ行けば…… >励ます。 「ありがとう。やさしい子ね…… 【ヘイムダル】 「あちゃ〜……ここから落ちたらさすがに死んじゃうよ。 【エリナー】 「それにしてもなんて寒さだ……トト、もどろう。違う出口を探すしかない。 【トト】 「!!!! 【エリナー】 「……しまった、生きていたのかっ! 【山男】 「……うう…… 【トト】 「……………………! 【ヘイムダル】 「トト…… 「ひょっとして、限界? >いいえ 「ホントに? >ホント 「ホントに? >ウソ <絶壁> 【ヘイムダル】 「う〜〜〜っ寒い! 「こりゃホントに凍え死んじゃうかもよ…… 【エリナー】 「……。 「……どうする。いつまでもこのままだと本当に…… 【ヘイムダル】 「トトはなんでこんな辛い思いをしてまで旅を続けようと思うんだい? 「僕は……この鎧の呪いを解く方法を探してるんだけどさ。 「それならどうして着たのかって?それはまあ……ちょっとした事情がね。 【エリナー】 「ふん…… 「ヘイムダル、何を隠す必要がある?お前が人を殺したところを、私達は見たのだぞ? 【ヘイムダル】 「……そういえばそうだっけ。 「あれを見られたからには、二人とも生かしておけないなぁ…… 「……っていうベタな展開は嫌い? 【エリナー】 「嫌いだ。 「……。 「本当にこのまま死を待つばかりなのか……? 「旅をしているのだから死なんてものはとっくに覚悟していたが……まさか凍死だとはな。 「てっきり怪物に頭でもはねられるもんだと思っていたよ。は、は…… 【ヘイムダル】 「ロッククライミングに挑戦してみるとか…… 【エリナー】 「強風にあおられて落っこちるのがオチだ。 【ヘイムダル】 「やっぱ無理だよね。 【エリナー】 「死が確実に目の前まで迫ってきている。否応の無い現実味を帯びて。 「だが……それでも実感が湧かない。 「このままでは確かに死ぬはずなのだが、『ひょっとして?』とか『なんとなく大丈夫なんじゃないか?』という気がするんだ…… 「……それが死というものなのかな。味わったことが無いから、よくわからないな。 【ヘイムダル】 「うーーん、退屈してきた。 「……。 【エリナー】 「……。 「何処へ行く気だ?いちかばちかで飛び降りてみる?馬鹿、よせ…… 【ヘイムダル】 「トトって魅力的だよね。 【トト】 「……?? 【ヘイムダル】 「こんな格好の人間に言われてもあまり気味のいいもんじゃないかもしれないけどさ。 「キミは自分が凄く純粋な人間だって、気づいてる? 「魅力的だよ。僕は凄く好感持ってるんだ。 >なんかウソ臭い。 「ま、悪く言えばバカっぽいんだけどさ。 「ちょっと寝る。考えまとまったら起こしてよ。 【エリナー】 「……。 「……え?なに……?ヘイムダル?あれがどうかしたのか……? 「眠ったらマズイ……?そりゃあ、マズイだろう。体温が……下がって…… 「……。 「え……?眠そう?この私がか?大丈夫、寝ないよ。 「もし寝てしまっていたら……私の脛を……思い切り蹴飛ばしてくれ……そうすれば飛び起きるよ…… 「そんなことはできない?大丈夫……その心配はない。ちゃんと起きてるよ…… 「……。 【トト】 「……。 「……。 「君、死んだよ 『……今度は騙されるもんか。 「今回はほんとうさ。でも安心しなよ。ここは天国だからさ…… 『天国……それってどんなところ? 「自分の目で確かめれば良いだろう?僕は次の人の相手をしなきゃならないからこれで失敬するよ。それじゃ! 『ふん。 『死んだ人間が……どの目で天国を見れるんだい?また嘘っぱちだろう。 『雪の冷たさを感じる肌も失って、  月の光を浴びる目も失ったし、  花の香りを感じる鼻を失った。一体何が天国を知覚できるっていうんだ? 『嘘っぱちはもうよせよ。 「やれやれ……一から十まで説明しなきゃならないんだな! 「魂が全てを見ているじゃないか。 『魂だって? 「君もよく知ってる抽象的なやつだよ。 <エデンの園> 【男】 「いーーーつまで寝てやがんだか!!遥かずっと昔からもう朝だぜ!? 「ここ?ここは楽園さ。あの世だよ。みりゃわかんだろ! 「まだ見てないだって!?!?そりゃいけねえやボウズ!見ろ見ろ! 「しっかり見ろよ! 【黒い服の男】 「……ようこそ。 「やあ、トト。よくぞここまでたどり着いたもんだ。 「ここは通称エデンの園と呼ばれている。ま、簡単に言えば天国だよ。これで、正真正銘世界のテッペンまで来たわけだ! 「“世界の果てには理想郷がある”キミがそう言ったんだったかな? 「人は理想を追い求めて歩を進めるんだ。人が歩むのを止める場所には理想郷以外の何処があるというのだろう? 「……今思えば、至極マトを得た回答だったのかもしれんね…… 「さ、もう全てを忘れてここで暮らすがいい。もはや私も君にとっては用済みだ。少なくとも、君はそう思っている。 「じゃあな、また会えると嬉しいな。……悲しいかな。 【男】 「何故ここが楽園かって?そうだなぁ、強いて言えば…… 「人間にとっての苦悩や苦痛がないからさ。空腹、暴力、疲労、義務、孤独…… 【男】 「ここには確かに全てがある。だが、全てが不足している醜い町にあってここには無いものもある。 「ここは楽園だが、ここに住む人々が不幸か幸福かは誰も知らない。 「私か?……私は幸せだよ。だからここにいる。……きみはどうなんだ? 【女】 「今日はなにをして過ごそうかしら……? 「そうね。なにをして過ごそうか考えて一日を過ごすことにするわ。 「あ、なにをして過ごすか決めちゃったらなにをして過ごそうか考えて一日過ごすことができないじゃない…… 「じゃ、今日一日どうしようかな?……あ、そっか。これでいいんだ。 「今日はなにをして過ごそうかしら……? 【女性】 「ここが天国なんていうのは真っ赤なウソ。なぜなら、ここに来れた人々は皆あの悲しみの山で死んだ者達…… 「わかりますか?あそこで死ぬというのが、次の世界への移動条件だったのです。 「即ち、このエデンの園こそは世界の続き……私達の冒険は続いているのです! 「ああ、しかし……これ以上何処へ行けと言うのでしょう? 【女性】 「ここの食料は全て木の実。とっても次々と無限に生るのよ。 「それに、とても美味しいのよ!マズイと思う人はまずいない筈だわ。 「飽きたら?……そりゃ飽きたら、飢え死によ。ほかに食料は無いんですもの。それは贅沢ってものよ。 【少女】 「ここには不足しているものなんてありません。水、食料、寝床全てそろっています。 【若者】 「ぼーーーっ。 【男】 「あーーーっ、退屈だ。なんて退屈なんだ。これだけ退屈だと辛いぜ。辛い、辛いよ。 【青年】 「退屈でイライラしてきたよ…… 「でも……暴力なんかの規定違反を犯したものは即地獄行きって噂だ。恐ろしくって…… 【男性】 「ここか?ここは性欲処理場だよ。馬鹿げているかもしれないが、人間には欠かせない大切な欲求だ。 「相手は皆同じ顔と体をもったホムンクルスだ。完璧な美貌と肉体だよ。私にはもったいないね、ははは! 【マギ使い】 「ん?そこの黒い甲冑?私が呪いをといてあげたら持ち主がくれた物ですよ。 「持ち主?さあ?もうこんなところ出て行きたいような事を言ってましたけど。 【男】 「金髪の女性マギ使いを見かけなかったかって?ちょっと漠然としすぎているが…… 「見た感じ根暗でサディスティックで神経質で傲慢で男なんかにてんで興味無さそうな金髪の女性マギ使いなら知っている。 「え?それで間違いないって?だったら君がトト君か!君に会ったらこう伝えるように言われたよ。 「“涅槃で待つ”。何のことかは分からないが、そう伝えろと言われたから伝えるまでだ。じゃあ、確かに伝えたからな! 【男】 「私の願望は……自分の手足をもいで、両目を刳り貫き両耳を削ぎ落とし、 「舌を引きちぎって、鼻を潰すことなのです。 「そうして私は私の内に宇宙を湛える。私はダルマになりたい。 【鳥男】 「ここでは人種差別もありませんよ。私はそう感じました。 【モノシリドリ】 「こんにちは。私はモノシリドリ科モノシリドリぢゃ。今日は特にネタは無い。 【若者】 「紅茶でもどうだい? 【子供】 「また変なお兄ちゃんがここにたどり着いたみたいだよ。宿屋に行ってごらん。 【若者】 「ここは……?俺は死んだのか……?たしか絶壁の寒さで凍えて…… 「ん?アンタぁ、確か山のてっぺんで会ったよな?ここはどこだ?へ?天国!?じゃあ俺はやっぱり死んだのか。 「ちょいと失礼。 「死んだにしちゃまだ元気なもんだな。足も生えてるし、安心したぜ。 「俺の名前はアシカ。世界の果てを目指すマギ使いさ。アンタは? 「トト……か。いい名前だな。ヨロシクな! 【トト】 「??? 【アシカ】 「なに不思議そうな顔してんだ。俺とパーティ組むのイヤかい? 「パーティを組む必要が無いだって?バカ、ここが天国だなんて信じられっか!さっさと旅を続けたいんだよ、俺は。 「お前、ホントにここが天国だと思ってるのか……? >うん。 「ふーん。ま、なんでもいいや。邪魔になるつもりはないからちょいと案内してくれよ。 【兵士】 「……。 【若者】 「そこにいる老人?さあ、なんとなく偉そうだっていうのは見れば分かるけど…… 「誰なのかは誰も知らないよ。天国で偉そうなんだから、神様かもな。はは…… 【老人】 「……。 「浮かない顔をしているな、少年。ここはお気に召さないか? >召さない 「そうか……。だが、君は死んだんだ。地獄に放り込まれるよりはマシと思うがね。 【アシカ】 「そうは思えねぇな、俺ぁ…… 「ここが天国だなんて、あまりに退屈過ぎやしないか?少なくとも俺には地獄だ! 【老人】 「それはここが悠久だからだ……退屈という者もいるかもしれない。 「完全な味の果実。完璧な美貌と肉体のホムンクルス。完全な空気、完全な大地、全てが宇宙の真を得た設計だが……人はこう言うのだ。 「毎日同じ食べ物で飽きた。性欲対象もずっと同じ。風景も代わり映えしない。 「“種類”や“変化”をつけろと言う者もいるが……それこそ大きな過ちであることに気がつかねばならない。 「種類は個人の価値観を具象化し、その相違がそのまま他人との優劣を形成する。 「そして起こるのは不毛な争いや奪い合い。必要の無かった『個』の主張とそれによる権利や義務の発生だ。 【アシカ】 「それが楽しいんじゃないのかよ。決められた楽しみだけで人間がいつまでも生きていけるもんか! 「人間はいつだって不完全で不安定さ。いくら環境が完璧でも、イレギュラーは人の中から生まれる。 【老人】 「今、我々は不完全な環境で育ってきた人々の清算をしているところなのだ。 「即ち、不純な精神の浄化。ここに来るまでの長い道のりやモンスター達によって篩をかけられた優秀たる人間は、 「このエデンの園で最後の適応の試練を与えられる。理想とはいつも不変不動。人がそれを得ようと思うのなら、耐えなければならない。 「耐え、適応し、進化するのだ。より純粋な新しい完全たる生物に。 「環境はそれを許しているのだ。人はそこへ進まざるをえない。 【アシカ】 「悪いけど俺は進化できそうもないぜ。どうするんだ?理想郷で人を殺すのか? 【老人】 「君はもはや死んでいるのだよ?死人の行き先は二つだ。 「適応のできない劣悪な遺伝子は残念だがここに残しては置けない。……地獄行きだよ。 【アシカ】 「適応できるものだけの理想郷なんざこっちからごめんだぜ! 【老人】 「もう一人の君はどうなのだ?君もやはりここがお嫌いか? >馴染める気がする…… 「ならば後ろの若者……君だけここから出て行ってくれ。 「ここを降りれば地獄だ。 「一度出て行けばここに戻ってくることは許されん。もう一度よく考えてみることだ。 【アシカ】 「ヘッ!考えるまでもねえぜ。 【老人】 「喜びや退屈、悲しみや楽しみ、刺激、変化。全ての罪悪の原因は感情という劣悪な波だ。 「ここには罰どころか神の祝福すら存在しない。ここにいる者達が神そのものだからだ。 「最後にもう一度だけ尋ねておこう。それでも君はここを棄てるか? >棄てる 「もはや何も言うまい。 <六道の辻井戸> 【アシカ】 「よう、やっぱりアンタも来たのかい……あんなところにいれるかってな! 「さ、いっしょに進もうぜ。一人で寂しかったところだ。 【トト】 「!! 【エリナー】 「遅かったな、トト。 「お前はきっとここに来ると信じていた。 【アシカ】 「あんなところに残る奴の気が知れねえってもんだぜ。 【エリナー】 「……誰だお前は? 【アシカ】 「トトの友達さ。アンタは? 【エリナー】 「顔見知りだ。 「さあ、先を急ごう。この世の果てが地獄だと言うのなら、閻魔大王に挨拶をしに行こうじゃないか。 「……ヘイムダル?さあな。上では見かけなかったが……会うべき運命ならきっとまた会える。 「……個人的には、好かないが…… 【黒い服の男】 「……ようこそ。 「やあ、トト。よくぞここまでたどり着いたもんだ。また会えて嬉しい。……悲しいかな? 「ここは通称冥府と呼ばれている。ま、簡単に言えば地獄だよ。こんなところまで来るなんて、いやはや…… 「永遠の安住を棄ててまで地獄に来る意味とは、一体何なのだ、トト? 「尽きる事の無い好奇心だろうか?それとも単なる楽観主義?あるいは……まあいい。 「……なんだか、君たちのほうがこの世界よりもよっぽど謎に満ちている気がするよ。 【アシカ】 「元祖の謎はアンタだろ。いいかげん正体を明かしたらどうなんだ? 【黒い服の男】 「……さあな。案外、君たちが知っているんじゃないのか? 【女剣士】 「渡し賃は3000貨じゃ。おぬしに払えるのかえ? >払う 「足りんなぁ。 「ならばお前達の着ている服で許してやろう。 >うん 「さっさと渡らぬか。 【子供】 「……。 <冥府> 【霊】 「ここが所謂、地獄でアリマス。 「おおアナタ!そんな肉体など早く鬼に喰われてしまいなさい! 【霊】 「こんなのはいかがデスか? 「お金、お金……キシ、キシシシ…… 【霊】 「ひぃぃぃいぃいい……ひぃぃぃぃいいいいいヒヒ…… 【宝箱】 「お前が求めるのは短刀か?それとも棍棒か?それとも飛び道具か? 「お前が求めるのは剣か?それとも槍か?それとも大剣か? 【霊】 「……紙切れくれたら……いいものあげるよ。 >あげる 「大事に使ってね。 <蜘蛛大社> 【武者】 「お前達は死んだのだ!!往生際が悪いぞッ! 【トト】 「……。 【エリナー】 「……匂いだ。 「……なにか、懐かしい香りがするな。 【トト】 「……。 【声】 「トト君…… 【トト】 「……? 【声】 「トト君……! 【アシカ】 「どうしたんだ、トト? 【声】 「トト君!!! <灰色ヶ原学園> 【尻池教諭】 「トト君!!なにをボーっとしているんだね!? 【トト】 「……! 【生徒】 「げらげら 「げらげら 【尻池教諭】 「まーーだ夏休みボケか?……放課後に職員室まで来たまえ! 「まったく、3年のエリナーといい……近頃の生徒ときたら…… 【生徒】 「職員室?一階にあるぜ。 「尻池のやつもお前のことが好きだよな。始業早々呼び出しなんてさ。 【生徒】 「あーあ、もっかい夏休みが来ないかなー…… 【生徒】 「今残ってるのは宿題組だよ。居残り。 【生徒】 「ふぁーーーーーーーーーー。 【生徒】 「商店街のクレープ食べに行く約束してたじゃない! 【生徒】 「あともうちょっとで終わるからさ。多分…… 【生徒】 「ここの学園もそう遠くないうちに街の大きい学校と合併するらしいよ。 「この校舎はどうなるのかな?……やっぱり取り壊しだろうな。もったいない、木造なんていまどき珍しいのに。 【生徒】 「夏休み明けの教室って油塗りたてでツルツルしない?それ、ツルツルツルー…… 【生徒】 「アシカ君てさ、バンド組んでるんだよね。うまくいってるのかな? 【生徒】 「ここは三階だから三年生の教室ばっかりだよ。 【生徒】 「鍵しまってら!一階の職員室まで鍵借りにいくのめんどくさいんだよな。でも忘れ物が…… 【生徒】 「ジロジロジロ。 【生徒】 「ここは三年の教室だぜ。お前は二年だろ?なんか用事か? 【生徒】 「エリナーも変わった奴だぜ。絵以外のことに興味ないんだもんな。実際、素人目にも凄いの書いてるってのは分かるけど…… 「……肩こらねえのかな?揉んでやるのに。フフフ…… 【生徒】 「君二年?じゃあ同じ学年のアシカ知ってるよね?知らない? 「え?知ってるような知らないような?どっちよ!まあいいわ。 「もし会うことがあったら今度のライブのチケットまたちょーだいってマジいけてるチャンネーが言ってたって伝えてね。一語一句正確に。 【生徒】 「宿題なんてもうどーでもいい!どーでもいいったらどーでもいい! 【生徒】 「宿題はどうでもよくないっしょー……成績にひびくっしょー……じゃあちゃんとやって来いよ!みたいな。 「……みたいな。 【教師】 「髪染めるの禁止!肌焼くのも禁止! 【生徒】 「フリョウセイト?チガマスヨ!ヒドイコトイイマスネ! 【アシカ】 「よいしょ……っと。 「……ん? 【トト】 「……。 【アシカ】 「……?? 「……うーーん?? 「……まあいいか。 【生徒】 「ここは見ての通り職員室だぜ。 【教師】 「エリナー君!きみという生徒は……私の授業を聞かずになにをやっていたんだね? 【エリナー】 「……ふん。見て分からなかったのかい?……絵を描いてたのさ。 【教師】 「ここは普通校だ!絵が描きたいなら芸術のところに行け! 【エリナー】 「細かいことで一々うるさい男だね。アタイがアンタの気に入らない成績をとっているかい? 【教師】 「そういう問題ではない! 【エリナー】 「じゃ、なんだい?問題って。自分の授業そっちのけで生徒に絵をかかれて、教師としての尊厳が失われたとか……? 「だとしたら気にしすぎさ。アタイにとっちゃアンタなんざ眼中にないからさ。気にせず授業しててくれたらいいのに。 【教師】 「……な、く、口の利き方に気をつけたまえ!! 「……もう我慢の限界だ!君には個人指導が必要なようだ。……来たまえ! 「さあ来たまえ!! 【エリナー】 「やれやれ…… 【尻池教諭】 「トト君か、君はここで待っていなさい。 【エリナー】 「……? 【トト】 「……? 【エリナー】 「アンタ…… 「……まあいいか。 【教師】 「あらトト君。今日は遅刻?出席日数ヤバイとか?あ、宿題忘れか。 【教師】 「エリナーさんにも困ったものね。勉強せずに絵ばっかり描いて…… 【教師】 「最近のガキどもは態度だけ偉そうになりやがって……全く。 「俺が学生の頃は…… 【教師】 「ふう。 【教師】 「信じたくない話だ……尻池先生が生徒に淫らな行為を強要している疑いがあるなんて…… 「ん?君はなにかようか?いつからそこにいる!いるならいるといいたまえ! 【生徒】 「尻池?さあ。学校内からは出てないぜ。 【生徒】 「エリナーと尻池?知らないね。 「地下の体育倉庫で変なことしてるんじゃないの?“個人指導の一環だ!”とか言いつつさ。ひゃひゃひゃ! 【尻池教諭】 「エリナー……君!きみってやつは…… 「教師に歯向かう、友達はいない、周りに誰も助けてくれる人がいないからこういう目に遭うんだよっ!! 【エリナー】 「……。 【尻池教諭】 「そら……怖くて声も出せまい……!大人を舐めるとこういう目に……遭うんだ! 【エリナー】 「……。 【尻池教諭】 「ひ、火ぃ! 「このガキ、何か持っているのか!? 【エリナー】 「性犯罪は再犯率が高いらしいですよ、センセイ。 「……いっそ、焼いてしまいましょうか? 【尻池教諭】 「しぇーーー!! 【エリナー】 「アンタ、昔どっかで会った事無いかい? 「……気のせいかな。すまない、初対面の人間にいきなり聞くことじゃないね。 【トト】 「……。 【エリナー】 「……なに?心配してくれているのかい?家まで送る? 「……ふん、余計なお世話さ。と言いたいところだけど…… 「やっぱりどこかで会ったことあるだろう?どうも他人とは思えないね。 「……ちょっと付き合ってもらうよ。 【トト】 「……。 【尻池教諭】 「トト君…… 「後ろにいるのはエリナー君じゃないかね? 【警察】 「生徒が危険物を持ち込んでいると伺ったのだが…… 「後ろの少女がそうなのか? 【尻池教諭】 「あーっ!逃げた!おまわりさん、あいつなんです!早く捕まえて……! <灰色ヶ原町> 【エリナー】 「ほら、急がないと……警察に捕まったらゲームオーバーだ! 【生徒】 「ここは灰色ヶ原学園ですよ。知っての通り。 【老人】 「ここの学校も古ぼけたもんじゃ……わしか?わしは第一回生じゃよ。 【生徒】 「え?なんですか? 【生徒】 「バス遅えよ。 【生徒】 「ここってお世辞にも都会とは言えないからさ……バス一本逃したら次来るの一時間後だよ。いいよな、歩きは。 【老人】 「フガフガ…… 【生徒】 「どうしたの?顔色悪いわよ。ちょっと落ち着いたら? 【主婦】 「ほら、京介、はやくこっちきなさい! 【子供】 「ヤダー!あれ買ってー!! 【老人】 「ええお日柄で。 【悪そうな人】 「辛気臭い顔しとるのぉ、ワリャ。 【婦人警官】 「きみ……学校の帰り?年は? 【子供】 「こうつうりょうが少なすぎ?……僕子供だからわかんないや。 【主婦】 「閉まる、閉まる、スーパーが閉まる…… 【エリナー】 「ここまで来れば大丈夫だろうね。 「……すまないね。下らないことに巻き込んじゃったみたいで…… >天気について尋ねる 「天気?悪くない天気だね。でもどうだっていいだろう、そんなこと…… >この町について尋ねる 「灰色ヶ原町だ。知っているだろう?なに?知っているような知らないような? 「違う町に住んでいるのか?え、ここに住んでいる?ワケのわからないことを…… >マギについて尋ねる 「!!やっぱり見られてたのかい。 「……見られたわりには驚かないから……妙なもんだと思っていたところだよ。 「そうか、ボウヤ……て、ことは…… 「アンタもマギを使えるのかい?使える?やっぱりそうなのか…… 「生まれつきなんだ。 「なんでマギって言うのか、どうしてこんなものが使えるのか、理由はぜんぜんわからないけど……でもそのことになんの違和感もないんだ。 「アンタとどこかで会った気がしたのは……同じ能力者同士の共鳴みたいなものかな? 【??】 「案外、前世で会ってるのかもな! 【エリナー】 「誰だい、アンタ……? 【アシカ】 「アシカだ。パンク歌手をやっている。 【エリナー】 「プッ…… 【アシカ】 「笑ってんじゃねえよ! 「ところで、お前達の話は聞かせてもらった。まさか俺以外にもマギが使える奴がいるなんてな…… 「正直、驚きだぜ。 【エリナー】 「アンタも……?今日はおかしな日だな……今まで人生で同じマギ使いがいることすら知らなかったのに、一度に二人も出会うなんて。 【アシカ】 「こんなところで話すのもなんだ。俺のウチにきなよ。 【エリナー】 「どうする……? 【アシカ】 「茶菓子も出すぜ。 >行かない 「良いから来なよ!来るだろ?来た方がいいぜ……ほーら、来たくなってきた……! 「よし、決まりだな!こっから真っ直ぐ行った途中に路地があるから、そこに入ってそのまま進むと俺の家だ。 【エリナー】 「……。(アタイの家に近いね。) 【アシカ】 「どうした?さ、行こうぜ。 「ここを真っ直ぐだ。 【少女】 「……。 「……バーカ。 【トト】 「……!? 【エリナー】 「……バカとはご挨拶だね。 【少女】 「みんな色々推測してるつもりで、空転ばっかし。結局分からず終いになっちゃうのに……気づかないんだな。 【アシカ】 「はぁ……??? 「関わらない方が良さそうだ。 【少女】 「トト、それにエリナー!いつまで学生ゴッコする気? 「二人とも、どこか目指してたんじゃなかったっけ? 【エリナー】 「目指して……? 【アシカ】 「俺の家だ。 【少女】 「ダメだこりゃ。 「……そんなことだと、いつまでたってもこの世界の仕組みを理解できないよ。きっと。 「自分の胸に問うてごらんよ。 「本当にここで生まれて、この近所に自分の家があって毎日毎日学校に通っていた? 「両親の顔は?クラスメートの名前を一人でもいってごらん? 【アシカ】 「……そういえば…… 「俺たち、神社に賽銭を投げて……それから強烈な眩暈がして…… 【エリナー】 「……じゃあここは一体何処で……アタイは一体何を? 【黒い服の男】 「ここは通称デジャヴュの世界。見るもの全てに既視感を感じる世界だ。 【トト】 「……! 【アシカ】 「お前は、黒い服の男……ということはやはり……! 【黒い服の男】 「そうだ。ここもキミ達の歩んできた世界の続きだよ。 「突然の異界の風景に、妙な懐かしさと既視感を感じただけでキミ達はここが自分のずっと住んでいた世界だと思い込む。 「知るはずも無い風景をさも当然のように感じる夢を見たことはあるかな?あれと同じだよ。 「さあ、本当の姿に戻ってみろ。 「……そうそう。やはりキミ達はその格好が似合う。 「さて……世界は単なる外観の変質だけでなく、意識のルールそのものにまで影響を与えつつある。 「一体どんな世界が待ち受けているか、誰にもわからない。 「例えどんな世界が待っていようとも……それでも君たちはやはり進むのだろう。 「自分の意志をしっかり保て。冷静かつ大局的な視野を持つんだ。自分の行くべき道を歩くんだぞ!! 【アシカ】 「しかしどうして…… 「どうしてお前はこの世界で自分を覚えていたんだ?こいつらの名前を知っていたし…お前は一体何者だ? 【少女】 「……ま、名乗るほどでもないけどさ。 「僕の名前はクリシュナ。あのヘイムダルの中身だよ。 【エリナー】 「ヘイムダルの……?女だったのか……! 【クリシュナ】 「なんだ、そっちの二人ぐらいは気づいているかと思ったけど……やっぱトロくさいね。 「それに僕がこの世界で本来の自分を認知していたことを驚いているようだけど…… 「単にそっちが既存の価値観に囚われすぎなだけのこと。 「環境を、他人を、自分を疑う。僕は何も信じないから自我を保てた。 「殊にエリナー、面白かったよ。 「きみって普段突っ張ってる割には何かを盲信してすがってなくちゃ耐えられないタチだもんね? 【エリナー】 「……突然、何の話だ? 【クリシュナ】 「あるいは絵、あるいはマギ、あるいは仲間、あるいは…… 【エリナー】 「くだらない……! 【アシカ】 「なんだお前、退屈してるから構って欲しいのか? 【クリシュナ】 「構って欲しい?金髪のお兄ちゃんだってそうさ……周りとの調和を常に求めている。 「でも素直になれないからワザと悪びれた態度をとってさ。なんだっけ?パンク歌手だっけ? 【アシカ】 「うるせえ!そりゃこの世界のでっちあげだろーが! 【クリシュナ】 「環境に投影した自分のイド……未知の違和感と不安定に揺らいであらわになった無意識の本能だよ。 【アシカ】 「悪いけど、俺そういうのに興味ないの。他あたってくんな。 【クリシュナ】 「トト……トト! 【トト】 「……! 【クリシュナ】 「キミって、本当にバカだよ! 「なにも深く考えずに、見たもの全てを受け入れる。そこにはなんの邪知も存在しない、まるで赤ん坊のように…… 「バカだわ、本当にバカだよ!どうやってそんなに美しい心を養ったの!?本当に…… 「僕、キミのことだけは信じてもいい。だから一緒に…… 「そんな奴らほっといて、一緒に行こうよ? 【エリナー】 「所詮、子供の戯言だから好き放題言わせてやっていたが…… 「トトがお前についていくとは思えないな。 【クリシュナ】 「そういいきれる自信ある? 【アシカ】 「あたりまえじゃねえか、仲間だぜ? 【クリシュナ】 「じゃあ……手っ取り早く本人様に聞こうよ。 「僕についてくるか、そっちの二人についていくか…… >二人について行く 【アシカ】 「ま、当然だよな。 【クリシュナ】 「きっとそのうち…… 「……僕のところへ辿り着く日が来るよ。絶対にね。 【アシカ】 「なんだったんだアイツは…… 【エリナー】 「……。さあ、先へ進もうトト。 「私達は確かにどこかへ辿り着きつつある。きっともうすぐだ…… 「進むしかない。 【アシカ】 「ここだ…… 「……俺はここを自分の家と勘違いして、この路地に入ったんだ。 【エリナー】 「私もここを自分の家だと…… 「……この先には一体、何があるのだ? <八咫烏> 【女中】 「ようこそ旅館、八咫烏(ヤタガラス)へ。お待ちしておりました。 「お部屋のご用意は出来ております。どうぞお上がりくださいませ…… 【男】 「靴を脱いでもらえますかい? 【アシカ】 「ちっ。仕方ねえ。 【女中】 「左手が当旅館自慢の小庭園にて御座います。 【アシカ】 「……一つ聞いておきたい。 「ここの旅館は客にバケモンとやり合わせるのも自慢の趣向か何かか? 【女中】 「……。 【エリナー】 「どうせ何を言っても無駄だ……まあ、それならそれで楽しませてもらおうじゃないか。 【アシカ】 「アンタぁいつでも余裕だな…… 【アシカ】 「つるつるの壷か……。 【トト】 「……? 【エリナー】 「……? 【アシカ】 「……。 【トト】 「……。 【アシカ】 「トトは意外と信心深いね。 【エリナー】 「なにかある……。 【男】 「……去れ。そなたらの品の無い格好を見ていると茶がまずくなる。 【女中】 「こちらへどうぞ…… 「左手が当旅館で一番広いお屋敷となっています。 【アシカ】 「……こ、ここが? 「身動き一つとれねえんじゃないのか……?? 【エリナー】 「……。 【アシカ】 「女中の奴……さきさき行っちまいやがって。 「めんどくせえ!靴はいちまおうぜ。 「しっかし広いねぇ…… 「無限に続いてねえだろうなぁ…… 【エリナー】 「この世界にいる限りそういうのは慣れっこだよ。 【アシカ】 「冗談じゃねえや……! 【教師】 「なんだー?ここは灰色ヶ原学園の宴会場だ。あっちにいけ。 【教師】 「アラかわいいボウヤ。酒のつまみにしようかしら……? 【教師】 「酒が飲める飲めるぞー。酒がのめるぞー 【教師】 「夏休みが明けたばかりというのに早速宴会だなんて……どうかしてるわ、ウチの学園。 【教師】 「子供は、帰って、早く、寝ろ! 【教師】 「資本主義がどーたら赤いのがこーたら学生運動がなんたらかんたら 【尻池教諭】 「……? 「は、はわわ……!!お前達、どうしてこんなところに……! 【トト】 「……。 【尻池教諭】 「な、なにかねトト君!!その目はいったいなにかね!? 【エリナー】 「自分の胸に聞いてみろ。 【尻池教諭】 「エリナー君……た、タイホだーーっ!! 【アシカ】 「何があったか知らないが、こんなのほっといて早く行こうぜ。 【尻池教諭】 「教師に向かってなんだその口の利き方は!!明日の学校で覚えていたまえ!! 「うう……バレないだろうか……早くタイホしないと…… 【教師】 「あ、パンクスのアシカ君。次のライブはまだかしら?先生ファンだったのよ? 【アシカ】 「はあー、パンクスという設定が俺の中のでっち上げなら、この人がこういうこと言うってことは一体どういうことなんだろう? 【エリナー】 「私達はそういう“この世界特有のメカニズム”を知るためにもまた旅をしているのだろう。旅が終われば、きっと全て理解できるはずだ…… 【アシカ】 「メカニズム……か。ご大層なもんだぜ。 【トト】 「……。 【男】 「貴様らのような若造がこの旅館まで辿り着くとは……心底驚きだ。 「だがこの先にあるのは……果たして貴様達が望むようなものかな?ククク…… 【女中】 「こちらがお客様のお部屋でございます。 「長旅でお疲れでしょう?ゆっくり腰を落ち着けて、当旅館自慢の景観をお楽しみ下さいな。 「絶景でございますよ……ふ、ふ、ふ…… 【トト】 「!! 【アシカ】 「絶景か。なるほど……ね。 【エリナー】 「現実の質感を感じる…… 「近いんだ、もうすぐそこまでやってきている。 【アシカ】 「なにが? 【エリナー】 「だから、現実が…… 【アシカ】 「……じゃあ、ここはやっぱり嘘っぱちの世界だと……? 【エリナー】 「少なくとも私はそう願う。 【アシカ】 「……ま、そうなんだろうな。 「いやぁね、もしここが嘘っぱちの世界なんだったら…… 「ひょっとするとお前らも嘘っぱちの存在だったりして……なんて思っちゃってさ。 【トト】 「……。 【エリナー】 「なるほど、一理ある。 【アシカ】 「冷めてんなぁオイ…… 【エリナー】 「所詮、誰が居ようと居まいと、なんの価値があろうと無かろうと私はただ前に進むだけだ。 【アシカ】 「ニヒリストだもんな。 【エリナー】 「単なるヘドニストだよ。 <アーミー・ドリーマーズ・ランド> 【アシカ】 「うっひゃー…… 「今度は一体どこに来ちまったんだ? 【エリナー】 「……ひとまず城に入ってみよう。 【兵士】 「おお、勇者殿!さあ王はあなたを待ちわびておりますぞ! 【魔法使い】 「北西の山の頂には炎の水溜りと呼ばれるマグマの池があり、とても危険です。 【若者】 「南の砂漠には黄水仙と呼ばれる魔物の塔が立っています。 【神官】 「遥か南の沼地にはランカシャー・ブラックバーンと呼ばれる4000フィートもの巨大な穴があります。決して近寄らぬよう…… 【戦士】 「四匹の邪悪な魔物の王がこのアーミー・ドリーマーズ・ランドを闇に支配しようとしているのです。 「勇者殿、どうか我々をお救いください! 【兵士】 「ここは人の立ち入れる場所ではありません。勇者様、どうかお諦め下さい。 【コロボックル】 「よ!奇遇だね。 「……なに?記録??セーブの基本はフィールドでしょ。 【老人】 「勇者様に祝福あれ! 【兵士】 「勇者様に敬礼! 【兵士】 「敬礼! 【王】 「よくきてくれた、勇者殿!私がこの城を納める王だ。 「いま、このアーミー・ドリーマーズ・ランドは前代未聞の危機にさらされている。 「この国は今まで四つの宝石に宿る精霊達の力によって邪悪なる者達を退けていたが……その四つの宝石が魔物たちに奪われたのだ! 「そして、その精霊の力を蓄えた四匹の邪悪な王達が、配下の怪物を操ってこの世界を闇に陥れようとしている! 「勇者殿!どうか奴らを打ち倒して4つの宝石を取り戻し、再びこの世界に精霊の守護をもたらしてくれ。おねがいだ! 「まずは北西の山に住む幻王を倒してくれ!! <炎の水溜り> 【幻王】 「この世界はお前達の言う“現実”ではない。しかし、紛れも無くお前達の言う“現実”でもある。 「お前達は現実に生きている。しかし、お前達の意識はお前達自身の意識に埋まっているのだ。 「即ち、情報。この世界は情報の立体的体験である。そしてそれは紛れも無い現実での活動でもある。 「全ては表裏一体……何人も宿命からは逃れられない。 「つまりこれから襲い掛かる恐怖と苦痛は限りなくリアルな死をお前達にもたらす。 「死ぬのだ、お前達は死ぬのだよ……!! <スパニッシュ・マジック・キャッスル> 【王】 「よくやってくれた!!さすがは勇者殿!! 「次は南の塔に住む竜王を頼んだぞ! <黄水仙> 【竜王】 「お前達は音楽を聞いたとき、それを色彩的に感受したことはあるか? 「ある映像を自分の目が捉えたとき、何かの味がした。何かの食べ物を食べたとき、まるで石や鉄の触覚を感じた…… 「このお前達の体験は、まさしくそれだ。あふれ返った知識や記憶の渦に埋もれ、虚構の五感を旅する悲しい旅人…… 「お前達の記憶の世界なのだから、そこに住む私もまたお前達なのだよ。そして、誰よりもお前達を殺せる。 「自分の創造物と言えども単なる後悔や自虐、内罰的なものとは少し違うぞ!! <スパニッシュ・マジック・キャッスル> 【王】 「次は更に南、沼地にある巨大な穴に蛇王が住んでいる。勇者殿に任せよう! <ランカシャー・ブラックバーン> 「もう、この世には誰も居ない。 「WllWMIIlMMW…… 【蛇王】 「この世界が、個人の記憶が形成するものだとわかった今、お前達の中で新たな疑問が生じる。 「“ならば、一緒に旅をする彼らも……所詮は自分の創造の産物なのか?” 「答えは限りなくノーに近いが……見ている世界は全く違うのかもしれない。 「シンクロする情報、しない情報。それに認識の違い……イチゴを甘いと感じる者がいれば酸っぱいと感じる者もいる。 「しかし、元は同じ世界に生まれ、生きているのだ。 「ところで……知っているか?お前達がこうしてこの虚構の世界を旅することは、現実のお前達が日常を生きることでもある。 「こちらで死ぬということは現実で死ぬということだ。虚構の世界を旅するということは、自らの臓腑を剥き出しにして生きることに等しい。 「残酷なほどもろい自分自身を悔やめ!! <スパニッシュ・マジック・キャッスル> 【王】 「最後は南東の雪国に住む剣王だ。勇者殿、頼んだぞ! <雪国> 【剣王】 「お前達が目指す“上の世界”とは、紛れも無く現実世界のことである。 「現実を目指して旅をする……即ち、夢の中にいる自分に気づき、目が覚めることを渇望する人間。 「しかし、これは夢ではないのだ。お前達の感性が現実世界をそのまま認識するとき……それは単なる混乱の悪夢の始まりに過ぎない。 「私もお前達の中の悪夢の一つだ。その神経で、いつまで耐えられるかな? <禁断の地下神殿> 【犬男】 「紙切れをもっているか?全部集めたら究極奥義を授けよう…… 「なに?集められっこない?じゃあもう二枚ぐらいでいいよ。 「お前が持っている紙切れの枚数は3枚だ。 「よし、約束どおり究極奥義を授けよう! 「あの技は強力だが消費もデカイ。使いどころを間違えると、破滅を導くことになるぞ! 【守り主】 「たかが人間に、この剣だけは渡せぬ。去れ! <スパニッシュ・マジック・キャッスル> 【黒い服の男】 「トト!!エリナー!!アシカ!!よくここまで来れたものだ……! 「これで分かっただろう、この世界は虚構であり紛れも無い現実。 「現実が五感を通して感じるものだというのなら、所詮それほどの違いは無いのだよ……私はそう思うがね。 【アシカ】 「知っていたのなら……どうしていままで黙っていた? 【黒い服の男】 「それが大きな誤解である事をお前達に証明するには、まず私自身について知ってもらわねばならない。 「現実世界に近づくにつれ、お前達は自分の立場を認識していった。 「私はお前達のその“認識”そのものが具象化された、一種の虚像である。 【エリナー】 「ということは……言い換えれば私達は今、お前が私たち自身の認識であると知ったということか? 【黒い服の男】 「するどい。 「そして私が“その通り”と答えたということは、お前達自身が確信を得たことの裏返しでもある。 【アシカ】 「なるほど。じゃあお前は本当に何も知らなかったんだな。 【黒い服の男】 「そう。そして君がそう気づいたことによって私も私自身が本当になにも知らなかったという事にたった今気が付いたのだ。 【アシカ】 「ややこしい話だなぁ、オイ…… 【エリナー】 「ならこれから私達はどこへ向かえばいいのだ?いや、お前に問うても仕方が無いのか…… 【黒い服の男】 「仕方が無いことはないさ。自分自身に問うて初めて分かることもある。 「次に待ち受ける世界はいよいよ現実と虚構の狭間。認識の浅瀬と呼ばれる世界だ。 「そこでは何が起きるか分からない。君達がついに現実を認識するのかもしれないし……あるいは…… 「……あるいは死や崩壊が待っているのかもしれない。 「最後にもう一度だけ問うておこう。今ならまだ深層意識に埋もれる事も可能だ。 「醜くとも必死に生にすがる者達の町でも、過酷な環境で内なる神に出会った者達の世界でも、どこへでも今なら戻れるのだ。 「それでもお前達は……自分の意識で現実世界を認識したいのか? >もちろん! 「後悔は、無いんだな? >もちろん! 「……よろしい。 「……ようこそ、認知の浅瀬へ…… <トト> 【司会】 「さあ皆さんお待ちかね!!哀れなトトの登場です!! 【トト】 「……?? 「……!?!? 【客】 「丸見えだぞ、ボウズ! 「見てあの顔!サルみたいに真っ赤だわ!! 「鼻はブタみたいにひん剥いてて…… 「蝋で固められたような瞼!! 【司会】 「どうですかトトさん、今のお気持ちは……? 【トト】 「……。 【司会】 「聞きましたか皆さん!酷く傷ついたそうです!! 【トト】 「!! 【客】 「お、サルが怒ってるみたいだぞ……? 「まあ身の程知らずね、バカの癖に…… 【トト】 「!! 【客】 「プッ…… 【司会】 「これは傑作だ!!今夜はなんという日でしょう!! 「人を見るのはなんて楽しいのでしょう!! 【客】 「人格の徹底的否定! 「値踏みの恐怖! 「絶対に知られてはならない内心の漏洩!! 「責任感! 「おや……被虐的恍惚……!? 【司会】 「なになに……?え?こっちからだって全員丸見え? 「そ、そういわれてみれば……!! 「なんですか、皆さん!!その姿が見えないスーツは!? 【客】 「え?知識人たちの間の流行も知らないなんて…… 「なんだ、所詮はあの司会も…… 「分別の無い哀れな哀れなプロレタリアート! 「よくもまあスーツ無しで家から出てこられるものですわ……! 「個人は下卑た自己主張!個人は恥!個人は突出ではなく、陥没である!! 【司会】 「ひ……ひぃぃぃぃぃぃい!!! 「ああ……違うんです……違うんです……トトのやつが……ホラ…… 「ううっ!否定的関心の対象転移ぃぃっ!!! 【客】 「お前は何処へ行く気だ? 「今ここで見えてるのはお前一人。 「責任重大!私達は無責任な存在!! 【トト】 「……。 【客】 「おい、司会!このサル今なんて言ったんだ? 【司会】 「付き合ってられない……と。 【客】 「……ふ、ふざけるな!! 「責任逃れだけは許されない! 「責任を免れようとするものの罰則は…… 「社会的永久追放! 「疎外だ疎外!! 「村八分だよ! 【オヤジ】 「あのォ〜……メェガネ…… 「メェガネを貸してもらえませんかねぇ? 【青年】 「ほら、交通渋滞だよ。 【ギルモア】 「……トト君か。元気でやっているのか? 「なに?いい加減参ってきた?はっはっは、なにを言うかと思えば…… 「それが現実じゃないか! 【男】 「とっととここから出たけりゃ、一番左上のドアだ。 「夜中に目が覚めると、蛍光灯が天井から落ちていた。何処から入って来たのか知らないが、黒猫が部屋中を駆け回り、窓から飛び降りる。 「また自分の知らない時に面倒な事が起こった。僕はそう思った。 「九つの珈琲を九匹のブタが運んできた。彼らは僕を囲んで散々罵った。  コーヒー、タバコ、節操のない食事、痛みきった臓物の香り……悲惨な口臭、そして口臭消し。 「人間臭い!!彼らの一人が絶叫した。僕は悲しかった。 「シルクハットにフロックコート姿の髭を生やした中年男性、えび茶色の袴を着た女学生、 「同じく袴姿に学生帽を被りカラコロと下駄を鳴らして歩く書生、ハイカラな白いドレスを身にまとったどこかの貴婦人 街は明治時代のようだった。 「隣には幼いカート・コバーンがいた。ここは何処なのだろうか?一体何処へ向かえばいいのだろうか?彼の埃臭いネルシャツを眺めながら、僕は思った。 「公園外れの森林。足元には雑草やら落ち葉、枯れ枝などがぎっしりと積もっており、そこへ木漏れ日がさらに複雑な模様を加えている。 「隣にいた何者かが、綺麗なものと美しいものの違いを尋ねてきた。僕はふとその場にしゃがみこんで、地面に生えている雑草を引っこ抜いた。 「そしてその土まみれの根っこを指して、これが美しいものだ、と確信をもって答えた。理由は僕にもわからない。彼は満足したのだろうか? 「電気屋で馬に関する質問をされた。それも言葉ではなく、感覚的で形而上のものだった。 「その問いかけにうまく答えると、電気屋に道場の加入を促された。最初からそれが目的だったのだ。 「申し出を断ると、相手の態度がまっさかさまに急変した。僕は呆れて店を出たが、終日不愉快な気分だった。 「友人に連れられて向かった先は、スターリンという豚料理屋だった。友人は豚しゃぶを勝手に頼み、席を立つ。 「どういうつもりか尋ねると、彼はここの店の店員で、どうやら自分は彼の客引きのノルマに手伝わされたらしい。 「一人で食べる鍋料理は、ここまで不味いものかと僕は驚いた。 【アシカの声】 「目覚まし時計は、鳴れば誰かに止めてもらえるのさ。わかるだろ? 【エリナーの声】 「全てはもっと単純な問題だ。私は誰も愛していない。 【クリシュナの声】 「誰も僕を愛していない!だったらもう何もいらないよ……! 【トトの声】 「……何も考えないこと。模様の、模様の、模様の、模様。 『……?? 『……!! 敗北者?違うね。 あんたは戦うのをやめたただの野良犬。同じ土俵に立ったと思っているのか……? 虚勢で彩られた顔面を鏡で見てみろよ。恐ろしく醜いぞ、間抜けだし。 そしてこいつは自分の恐怖と孤独を自分の肥やしにしてまた虚栄とナルシズム。いい加減疲れないのかな? (疲れたって、あんたたちが……) これだ             コレ!       これだ    これだよ               またこれだ 実のところは何にも知らないんだ。お前だって何をしってるんだ? 何をどれだけどのように知ったら、何を知った事になって、結局お前は何が知りたいんだ? そんなの誰に分かる?みんな、何とか必死に伝えようとしてるんだよ。もうなにがなんであるかなんてそんな事は誰にも分からない。 僕やお前が何をするために生まれてきたのか、お前には説明できるのか? みんなが一緒くたになって襲ってくるから、僕には戦うものが多すぎて、そして、こんな事を言われても結局混乱するだけで、 漠然としたイライラがみえたら、それが漠然だったんだよ!! 何処にも何も存在しないし、誰にも何にも分かりはしないんだ、お前だって、何を知ってるんだよ! くっだらない幼児の言葉遊びと何にも変わらないじゃないか ああ、もういっそ……世界なんて転覆すりゃいいんだ…… 【アシカ】 「……トトじゃないか…… 「……うまくやってるか? 【トト】 「……。 【アシカ】 「え?個人は陥没……??ワケのわからないこと言わないでくれよな。 「……なんか疲れるな、ここ。 <アシカ> 【クリシュナ】 「金髪の兄ちゃんは……どうしてまたこんなところに居るのかな? 【アシカ】 「あの混乱の世界の中に触れて……初めて分かったんだよ。 【クリシュナ】 「なにが? 【アシカ】 「この世界は単なる虚構の世界じゃくて…… 「自分の中の積もりに積もった記憶や情報を効率的に管理、共有する為の……一種のシステムなんじゃないかって…… 「つまり……何かが増えすぎて、何かに圧迫されて、何かに圧倒されつつある現実世界の俺の精神が無意識にとった対策なんじゃないかって。 【クリシュナ】 「兄ちゃんの仮説には別に興味無いからさ…… 「で、これから結局どうするわけ?あれだけ待ちわびた現実がすぐ目の前にあるのに、もうあきらめるつもりなの? 【アシカ】 「……分からない。 【クリシュナ】 「トトは混乱と戦いながら、立派にやってるみたいだよ。 【アシカ】 「あいつは……あいつの場合は……あいつだったら…… 「……いや、もう何でもいい。 「お前こそ、さっさと行けよ。お前が何をしたいのか、見当もつかねぇけどよ…… 【クリシュナ】 「へっへっへ……みんながトロトロしているうちに、やるべきことは済ませたよ。僕は。 【アシカ】 「どういう…… <エリナー> 【エリナー】 「誰かと思えば…… 【クリシュナ】 「エリナーは……何処に行く気なのかな? 「その先は木霊の森。現実世界への道じゃないよ。 【エリナー】 「……ああ、そのようだな。だが私が求める場所は現実世界じゃあなかったんだ。……なかった気がする。 【クリシュナ】 「木霊の森は、現実と虚構の世界の延長。1と0の間にある無限の小数の世界…… 「人間には到底及び無い永遠の空間だよ。全ての可能性があるから、また何の意味ももたない。所詮は虚無のトートロジィだよ。 【エリナー】 「やけに詳しいな……?ここはそんな場所だったのか……知らなかったな。 「……だが、この場所を見つけたとき、肌で感じたよ。ここが私の求めた場所だ……と。 【クリシュナ】 「あのね……永遠に殉ずるのはそりゃそっちの勝手だけど、結局はなんの意味ももたないんだよ? 「ポンッ!と宇宙を渡されても、人間には到底扱いきれないでしょ?地球があるから人間は生きていけるわけで、 「また重力という束縛があるから地面を歩けるし、種も落ちる。 「束縛、緊張、目的、葛藤……そういうものがあって初めて行為に意味が生まれるわけで…… 【エリナー】 「勘違いするな。私は別に意味なんて求めていない。 「私は……ただ探求したかった。世界の果てを目指してはいたが、果てなど無く永遠に続いてたのならそれでもよかった。 「そこへふと、現実世界という終着地点を与えられたとき、私はとてつもない不安感を感じたんだ…… 「途方も無く描き始めた絵がキャンバスいっぱいにまで広がったときや…… 「その作品自体が周囲に絶賛を浴びたとき、不可解な不満を覚えたことはあるか? 【クリシュナ】 「ない。 【エリナー】 「だろうな。あるいはただ、私は静謐な世界に憧れているだけかもしれない。 「もしあの二人に会うことがあれば、さよならを伝えておいてくれ。そういうのは好きじゃないんだ。 「……やはり一人で旅をしていればよかったんだ。 【クリシュナ】 「……ふーむ。 「ありゃイカれてるわ。 <クリシュナ> 【トト】 「……。 【クリシュナ】 「トト、どうやら現実世界を目指すのはもうキミだけみたいだよ……。 【トト】 「……? 【クリシュナ】 「エリナーは永遠の世界に旅立って行ったし、アシカは元居た虚構の世界に引き返して行った…… 【トト】 「……。 【クリシュナ】 「キミは……最初の意志どおりこのまま現実世界に戻るんだろうけれど、僕に一つ提案があるんだ。 「現実世界に行くのはやめて、僕とこの世界で一緒に暮らさないかい? 【トト】 「……??? 【クリシュナ】 「キミはここがまだ例の認知の浅瀬だと思い込んでいるようだけど…… 「実は、ここは僕が作りこんだ幻想世界なんだ。ウソだと思ってるでしょ? 「そんなことが出来るわけ無い?……ふふ……出来ちゃうんだなこれが。 「まあ僕の言い分もきいてよ、トト。 「アシカは虚構の世界に帰っていったけれど、それは結局のところ“諦め”や“逃避”に過ぎない。 「そりゃあ、それも一つの手段だろうけれど……逃げた先にはやはり今まで以上の苦痛が待っているのは、当たり前だよね。 「エリナーは……永遠の世界に旅立った。そこには結局なにもないのだから、当ての無い放浪を続けるのみ。 「死となにも変わらないよ。 「そこで僕は自分が拵えた虚構の世界に住むことを決めた。 「エリナーのように永遠の世界だけど……全ては僕の思うがまま。 「退屈すれば目的や束縛を作ることも出来るし、辛ければ一切をやり直すことも出来る。 【トト】 「……。 【クリシュナ】 「それって結局何も無い永遠?そう、実はそうなんだよトト!そこで考えたんだ。 「もう一人人間が居れば、幸・不幸の両面を備えた自分の及ばない領域が出来る。永遠の囲いが出来ると思ったんだ。 「それがトト、キミだよ。僕の理想であるキミさえいれば、僕の世界は完成するんだ…… 「……来てくれるよね? >ふざけるな! 「……ふーん。だったら別にいいよ。実はもう一つ楽しみを見つけたんだ。 「世界を粉微塵に破壊しようと思うんだ。 【トト】 「!? 【クリシュナ】 「出来るわけ無いって思ってるでしょ?忘れた?僕は全てを創造できるんだよ…… 「どうしてこんなことが出来るか不思議だって? 「……実は、キミがモタモタしている間に、僕は現実世界に辿り着いたんだ。そしてもう一度この世界に帰ってきた。 「世界の両方を行き来したお陰で、僕は現実と虚構の関連性について学んだんだよ。 「この虚構の世界が人の記憶や情報世界なら……どういった形の記憶が全ての人に共通する虚構を生み出すか。 「それを理解できたからこうして世界を創造できるし、他人にとっての脅威を生み出せる。 「言っちゃあ、僕はもう神様なんだよね…… 【トト】 「……。 【クリシュナ】 「……つまり、キミがあくまで現実世界に戻ろうとするなら、僕はまずキミから殺さなきゃいけない。 「これは僕だけの特権なんだ……誰にも渡すもんか……!! 「あっあーー!!この国賊! 【アシカ】 「世界をぶっ潰すような事抜かすやつが、ふざけんじゃねえ! 【クリシュナ】 「……ま、今のは軽い小手調べなんだけどさ。 【アシカ】 「さあ次はどのポンコツだ?何体でもかかってきやがれ! 【クリシュナ】 「ふん!まだこの世界における究極の力が何なのか分からないから……理解する時間が欲しいだけだよ。 「と言うわけで、こんなのとでも遊んでおいてよ。 【アシカ】 「……ちっ、二人じゃ流石にキツイぜ…… 「エリナーのやつさえいれば…… 【エリナー】 「まったく…… 「だから一人旅していればよかったんだ…… 【クリシュナ】 「どーも、凄く参考になるよ。 「あと一回の戦闘で……究極の力が理解できる自信あるわ。 「というわけでゴー! 【エリナー】 「トト!ここは私達が食い止める!! 【アシカ】 「あいつが究極の力とやらを悟っちまう前に……ケリつけちまえ!! 【トト】 「…………!! 【クリシュナ】 「うわっ……と!暴力反対〜! 「い……イタ…… <認知の浅瀬> 【アシカ】 「……ここは……認知の浅瀬か? 【エリナー】 「……クリシュナの幻想世界がその形を失ったわけだ。 「もう創造する力が残っていないのだろう…… 【アシカ】 「トト、とどめを刺しちまうんだ! 【トト】 「……。 【エリナー】 「分かっている。無抵抗な相手を、それも一時は一緒に戦った仲間を殺すのは……決して心地よいものではない。 【アシカ】 「だったら俺がやるぜ。悪いが、絶対にもうこいつを生かすわけにはいかないんだ。そうだろ二人とも? 【クリシュナ】 「そりゃ……トト……キミはいいよ…… 「思ったことを思った通りにやれば、全てうまくいって……何をするわけでもなく他人に好かれて…… 「ま、仕方が無いか。キミには力があって……僕には無かったんだ……はは。 「人類平等が嘘っぱちなのも知ってるよ。僕は所詮……この程度の人間なんだ…… 「でも……でもね……たった一つだけ我慢できないことがあるんだ…… 「負けんのだけは絶ッッッ対にイヤなのよ……! 「こんなときにアレだけど…… 「……トト、僕は本当に君のことを愛していたんだよ。 「究極の力って……なんだろう? 「恐怖?憎しみ?孤独?悲しみ?痛み?愛する事?喜び?恨み?残酷さ?狂気? 「僕は全て知っているんだぞ!! 「こんな世界にもう未練はないんだ!!! 「僕は人間という人間につまらない思いをさせられてきた……トト、それはキミも例外じゃないよ。 「みんなもどうせ辛いんだろ?世界なんて一斉に滅んじゃえばいいと思ってるはずだ。これは僕からの最大の善意なんだよッッ!! 「死ね、死ね、死ね、死ね、死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね 「あ、あは、は、あはははははは!!! 「今度生まれ変わったときは…… 「……。 【エリナー】 「クリシュナ……か。純粋な心の持ち主だったが……ある意味で少し弱かったんだと思う。 「……誰も責められないさ。 【アシカ】 「で、これからどうするんだい? 【トト】 「……。 【アシカ】 「俺は本当の自分の居場所を探すためにもう一度最低の地まで遡るつもりだ。 「……みんなは? 【エリナー】 「……私は……木霊の森という場所へ向かうつもりだ。そこで永遠の旅を続けるんだ…… 【アシカ】 「本気かよ?……本気なんだろうな。 「……トト。お前は…… 「……やっぱり現実世界へ向かうつもりか? 【エリナー】 「クリシュナのような過ちを犯さないと私は信じている。止めはしないよ。 【アシカ】 「……そうだな。俺も信じるよ。 「安心しな!間違いがあったらこの俺がぶっ飛ばしてやるからよ。はは、は…… 「……??なんだ? <夜明けの玄関> 【エリナー】 「ここは…… 【アシカ】 「……きっと虚構の世界の頂上、出口なんだ。 【トト】 「……。 【黒い服の男】 「おめでとう、トト!!おめでとう、エリナー!!おめでとう、アシカ!! 「ここがキミ達の追い求めつづけた場所、夜明けの玄関だ。 「ここを抜ければ虚構の旅は幕を閉じ、歩んできたはずなのに知らない世界……即ち“現実世界”が始まる。 「そこがキミ達の望んだ世界なのかどうかはキミ達自身が行ってみなければわからないが……ひとまずこう言っておこう。 「おめでとう、と。 「気をつけてな、トト!! 【アシカ】 「……じゃあ、俺はここまでだ。 「……。あー、なんだろう。 「……しっかりやってこいよ。それでたまには……そうだな。手紙でもよこせよ! 「エリナーも、元気でな。楽しかったぜ。ちゃんとここに届く手紙を出してくれよ! 「そうだトト……現実の俺によろしく言っといてくれよ。 「髪逆立ててるから、きっとすぐわかるよ。……じゃあな! 【エリナー】 「楽しかった……か。死ぬような思いを何度もして……ああ、実際に死んだこともあったかな。 「でも良く分かる。だからこそここまで来れたんだ。 「結局この虚構の世界で……一番正しいことが何なのか私にはわからなかった。 「ある者は元の世界へ引き返した。ある者は永遠の世界へ。ある者は現実世界へと旅立とうとしている。 「そしてある者はそんな答えのない世界の全てを破壊しようとした…… 「だが、トト。忘れるな。私達は肉体も意思もある人間なんだ。 「様々な限界があるから、答えは出るんだ。そしてそれは人それぞれ違う。 「アシカも私もお前も……クリシュナですらあるいは正解だったのかも知れない。 「一番正しい知性と選択を。忘れるな、トト! 「さよならだ。 Ending No.14 『NEW ADVENTURES IN HI-FI』 The End <羊水の海> 【黒い服の男】 「三人そろってまたこんなところへ……そういえば、砂の星にある孤独の洞穴は行ったかな? 「そうそう。クリア記念にアイテムをプレゼントしてある。好きに使うといいぞ。 <孤独の洞穴> 【男】 「エンディングはトゥルー・エンディングを除いて全部で13個あります。(ここを見ている限りあなたはトゥルー・エンディングをクリアしているはずです) 「羊水の海に1つ、醜い町に2つ、砂の世界に2つ、汚れた湿原に1つ、氷の世界に1つ、 「エデンの園に1つ、灰色ヶ原町に1つ、アーミー・ドリーマーズ・ランドに1つ、認知の浅瀬に1つ、夜明けの玄関に2つあります。 「なお、エンディング確認のためにイベントが復活している場合もあります。 >そんなもん集めてどうするの? 「別にぃ〜〜〜。チロルチョコあげる。 >エンディング確認 Ending No.1 『海への回帰』 Ending No.2 『I'm Only Sleeping』 Ending No.3 『すぐそこにある幸福』 Ending No.4 『永遠の眠り、永遠の統治』 Ending No.5 『悪の華』 Ending No.6 『以心伝心』 Ending No.7 『山男』 Ending No.8 『パーフェクト・ワールド』 Ending No.9 『所詮は他人』 Enidng No.10『探求の終息』 Ending No.11『アダムとリリス』 Ending No.12『生きるということ』 Ending No.13『うずまき』 Ending No.14『NEW ADVENTURES IN HI-FI』 「あんたも酔狂な人だね。はいよ、チロルチョコ。 <スタッフルーム> 【つくったひと】 「クリアおめでとう!!というか、クリアありがとう!! 「ここは三畳一間。スタッフルームです。 「スタッフって言っても一人だけなんだけどね。ひひ、ヒひひ…… 「廊下に出たら隣が音楽室。そのまた隣が出口だよ。 ♪「羊水の海」 最初にこの曲を作ったため、良くも悪くもドップリ悲壮な世界観になってしまった。 ちなみに、周りからはけっこう評判よかったりする。う〜ん、みんな根暗〜。 ♪「腐った細道」 先にマップの方を作っていたのでイメージしやすく、作りやすかったのを覚えています。 このゲームにとって、けっこう重要な位置付けの曲だと思ふ。 ♪「醜い街」 最初の町のBGMがアコギ一本、というアイデアを思いついたとき、これはイケル!と思ったり。 果たしてイケているかイケていないかの最終判断は、プレイヤーさんにおまかせ。 ♪「胎動の白いざわめき」 タイトル曲。 タイトル画面が白いので、なんとか音のイメージも白くなれ白くなれ……という風に作った曲です。でもあんまり白くない。 ♪「盗賊の巣窟」 かごめかごめを意識して作った曲。こういうところに日本のサイケを感じる。 ♪「プラスティカ」 はて……?この曲を作るにあたって、見覚えの無い風景が頭の中にあるんです。 きっと思考の形が映像に変換されたものだと思うんですが、夢ってつまりそういうもんなんじゃないかなぁと思ったり。 でもってそれを音に変換したのがこの曲であって、結局あらゆる創作の根本にあるのは同じものなのかなぁ……と、とりとめのない思考。 ♪「砂の星」 最初の「ちゃららららーん」というシタールの音で友人の失笑を買いました。 ♪「苔むした石」 変な魅力のある曲で、個人的に気に入ってます。なんとなくマリ○3をイメージ。 ♪「何処でも無い場所」 神寂れた神社や日本の庭園を意識して作った曲。心はなんちゃって禅。 ♪「亜麻色の髪の少女」 ドビュッシーの名曲。あぁぁあ……自分の曲の未熟さが浮き彫りに……!! ♪「汚れた湿原」 「I'm Only Sleeping」をBGMで使いたい!という一心で作った曲。 なんでこんなヘボくなっちゃったのかは謎。ダサさとカッコよさは紙一重。 タイトルは汚れた湿原とありますが、結局もう少し先の氷の世界で使うことに。でもBGMとして似合うのはやっぱり前者の気がする。 ♪「愛無き菩提樹」 退屈だったときに適当に作曲したもので、使えそうな場所に適当に流してみました。 ♪「夢」 中期のビートルズを意識した曲。最初はこれをタイトルナンバーにしようか悩んだ。 ♪「やっつけ仕事」 灰色ヶ原のために0.2秒ほどで作曲した。ワウが使えたらよかったのになぁ…… ♪「灰色の夕日」 著作権から身を守るために生まれた曲。 なんかに似てると思ったら、ラルク○ンシエルの死の灰に似てなくないと言えない事も無い。 ♪「無垢なる混沌」 シリアスで内省的な曲が欲しくて作った曲。ゲーム内じゃクリシュナのテーマみたくなってます。 ♪「八咫烏」 さくらさくらと演歌をモチーフにした曲。ちょっと目立ちすぎかもしれない。 ♪「暗い暗い思い出の淵」 後半のうねうねはやりすぎたかもしんない。 ♪「羊水の海(夜明けの玄関 Ver.)」 ジョン・レノンのイマジンを使いたかったのでマネして作った曲。 というわけでピアノが微妙にウォール・オブ・サウンド。 ♪「眠りによせて」 ピアノとアコギのみの省エネ仕様です。(手抜きとも言う) ♪「オルゴール」 あんまし使いどころが無かった曲。むず痒い曲。 ♪「勝利の宴」 ベースとドラムだけの省エネ仕様です。(手抜きとも言う) ♪「鏡と鏡」 フレーズをつぎはぎして出来たコラージュみたいな曲。即ち、手抜き。 ♪「ベア・サイケデリア」 小学生時代の頃からボス戦闘のBGMだけには強いこだわりをもっていたために、 今回一番作るときに悩んだ曲かもしれない。モチーフにしたのは実はジミヘンだったりする。 ♪「大怪獣」 対怪獣戦に一曲欲しかったので、ちゃちゃっと作ってしまった。 ♪「非・雑魚パストリアス」 対クリシュナ戦のBGM。ウェザー・リポートのスタイルパクリまくりです。 というか途中のベースのフレーズってモロにジャ○・パストリアス……訴えられたら敗訴確実。 ♪「夜明けの汽笛」 頭の中にぽっかり浮かんできたのでとりあえず形にしてみた曲。 ハレ・クリシュナ戦で流してみたら意外としっくりきたのでめっけもんです。 ♪「血の踊り子」 ラスボス戦の曲。ハレクリシュナのハレはネオエ○スデスのネオみたいなニュアンスでつけてしまったが、多分本来の意味とは全然違う気がする。 ♪「Mapleleaf Rag」 スコット・ジョプリンという人の曲。 【鳥】 「そこの出口からゲームの外にでれます。さようなら。 「お、チロルチョコもってるね。じゃあメインキャラについてちょっとだけ。 >トト 「トトはデフォの名前がトトだけど、これはサッカーくじとかトイレ屋とかどっかのバンド名とかから取りました。 「深い意味は無いです。RPG主人公らしい喋らなくてどこでも平気で泥棒するキャラ。 >エリナー 「もちろんどこぞの曲名から拝借。最後は永遠に逝ってしまいました。 「このメンツの中でもとりわけナルシストなくせに、なんかどんくさい女子。 >アシカ 「名前に特に由来なし。バカ。きっと現実世界でも本当にパンクスなんでしょう。ノーフューチャー。 >クリシュナ 「ヒンドゥーの神様。名前がいやらしいのでつけました。 「実のところは色々よわっちくて情けない奴。ほかのキャラは理想的な部分が強い中、作者自身が一番投影された気がする。 THE END (c)2003 つくったひと